国土面積当たりの太陽光整備容量

 国土面積当たりの日本の太陽光発電導入量が、主要国で最大となっている。平地面積でみると、2位のドイツの2倍と断トツだ。単純な導入量も世界3位で、太陽光はFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)を追い風に急拡大した。その裏返しで、適地の減少という課題が浮き彫りになっている。大量導入には土地を捻出する施策が必須だが、特効薬は簡単に見つからない。

 日本の太陽光導入量は2019年度時点で5600万キロワットと、中国、米国に続いて世界3位だ。一方、国土当たりの導入量をみると、首位に躍り出る。中国と米国は順位を下げ、代わって欧州各国が浮上する。

 再生可能エネの大量導入に向けた議論で、土地の確保が大きな論点に挙がっている。FIT開始当初はメガソーラーが盛んに開発されたが、徐々に適地が減少。20年度のFIT認定量は150万キロワットと、ピークの2500万キロワット(13年度)から激減。内訳をみても10キロワット未満が半分以上の約80万キロワットを占め、案件が小型化している。
 
 ◇整地費用負担に
 
 土地を生み出す施策が急務となり、経済産業省の有識者会合では、様々な案が取り上げられている。その一つが荒廃農地の活用による営農型太陽光事業だ。自然エネルギー財団は42万ヘクタールの耕作放棄地のうち、一部を太陽光に転用できると提案する。農林水産省は、荒廃農地を再生利用する際の規制を緩和する方針だ。

 経産省は農家の意思が関わる耕作放棄地より、客観性の高い荒廃農地をもとに検討すべきと主張した。再生可能な荒廃農地9・1万ヘクタールのうち、系統確保が比較的容易な平地・都市的農業地域の割合は37%の約3.4万ヘクタールになると分析した。

 農水省は再生困難な農地の非農地化も推進する方針だが、山林化した土地が多く整地に費用がかかる。経産省の有識者会合のヒアリングで、荒廃農地の整地に1キロワット当たり約4万円が必要との試算も出た。5.6万~6.2万円かかった例もあったという。調達価格等算定委員会で分析した平均的な土地造成費は1.2万円のため、整地は大きなコスト増になる。経産省は「荒廃農地が(再生可能エネに)活用できるか、慎重な分析が必要」という姿勢だ。
 
 ◇中小のZEH化
 
 ヒアリングでは、住宅への太陽光パネル設置義務化も提案された。新築戸建てのZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)率は、大手ハウスメーカーで5割と進む。だが、注文住宅のシェアで7割を占める中小工務店のZEH率は1割未満と低水準で、中小の底上げが課題だ。

 戸建て・共同住宅向け太陽光の19年度FIT認定量80万キロワットの内訳をみると、新築が約8万件で既築が約6万件だった。19年度は約88万戸の新築住宅が建てられたが、三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、30年に66万戸、40年に46万戸まで減る見通し。既築住宅総数2900万戸のうち、約35%の1千万戸は耐震設計で太陽光パネルの設置が困難。カーボンニュートラルの実現にZEH率の向上は欠かせないが、再生可能エネ大量導入の観点からは限定的な効果にとどまりそうだ。

 FITを活用せず、RE100にも利用可能なオンサイトPPA(電力販売契約)にも期待が寄せられる。経産省は環境省と連携し、初期費用ゼロで設備導入を支援する予算事業を実施。約40億円かけ約350件を採択し、導入されたのは7・4万キロワット。経産省は「量には効いていない」と分析している。

 土地の確保は太陽光に限った課題ではない。安藤至大・日本大学教授は、「陸上風力と太陽光のどちらをつくるのが効果的かといった比較が必要だ。国土面積が限られるなか、(再生可能エネ同士で)土地の奪い合いが起きる」と指摘。どこにどんな発電方式の電源を入れるのが有効なのか調整すべきとした。

電気新聞2021年4月9日