周波数を安定化させるフィルター。積雪に備え屋根やかさ上げ対策が施されている

 東京中部間に建設された「飛騨信濃周波数変換設備(FC)」が31日に運用開始する。中部電力パワーグリッド(PG)が岐阜県高山市内に、容量90万キロワットの飛騨変換所を新設。東京電力パワーグリッド(PG)は既存の新信濃変電所(長野県朝日村)に交直変換設備を増設、飛騨と新信濃を結ぶ飛騨信濃直流幹線(亘長89キロメートル)の建設を担った。運開後のFC容量は、現状の120万キロワットから210万キロワットに拡大する。両社は運開に先立ち29日、飛騨と新信濃の現場をそれぞれ報道公開した。
 
 ◇飛騨変換所を新設/中部電PG
 
 飛騨変換所は、標高約1085メートル、冬季には氷点下20度以下、積雪2メートルに及ぶ厳寒地帯に建設された。中部電PGは2015年10月に現地工事に着工。機器の基礎工事や建物の建築工事、機器の据え付けなどを同時並行で対応、工事後半は冬季も作業を中断せず、工期短縮を図った。

 交流を直流に変換する「サイリスタバルブ」や、電流の高調波を吸収する「フィルター」などの機器を配置。フィルターは海外製品を採用し、コスト低減を図った。全てのフィルターを海外製にしたのは、国内初の事例だという。

 積雪対策として、フィルターの上部には雪よけの屋根、下部の土台にはかさ上げ用の脚を設置。積雪2メートル、氷点下30度の寒さにも耐える設計とした。

 送電設備では、飛騨変換所と接続する50万V越美幹線の鉄塔1基を分岐用に建て替えた。越美幹線と変換所の間には、鉄塔1基と亘長430メートルの飛騨分岐線を新設した。

 中部電PG送変電技術センター飛騨直流連系工事所の洞浩幸所長は「厳しい工期と自然環境の中での建設だった。運開後は電力の安定供給に向けて大きな力になる」と語った。
 
 ◇新信濃で増設対応/東電PG
 

交直変換設備の心臓部となる「サイリスタバルブ」(東電PG・新信濃変電所)

 周波数が異なる東日本と西日本間で電気を融通するためのFCは現在、新信濃、東清水、佐久間の3カ所があり、合計設備容量は120万キロワット。そのうち60万キロワットを東電PGの新信濃変電所が持っている。1977年に1号FC、92年に2号FCが運開している。

 今回の工事では、新信濃変電所に交直変換設備の心臓部となる「サイリスタバルブ」や直流に変換された電気を平滑化する「直流リアクトル」などの直流設備、直流から交流に変換された電気の高調波を取り除く「交流フィルター」や電圧を一定に保つための「調相設備」などの交流設備を増設した。

 2016年4月に着工。20年6月に交直変換設備の使用前自主検査を終え、10月から今年3月25日まで系統連系試験を行った。岐阜側も含めた総工費は1300億円程度。タイトな工事工程に加え、新型コロナウイルスの影響もあったが、遅延なく運開を迎えることについて工務部送変電建設センターの藤岡慎太郎・東西連系線新信濃グループマネージャーは胸をなで下ろす。東京五輪・パラリンピックの開催も控え、「安定供給に寄与できる」と期待を示す。

電気新聞2021年3月30日