ウーブン・シティの完成イメージ

 トヨタ自動車が昨年末に閉鎖した東富士工場跡地(静岡県裾野市)で実証都市「ウーブン・シティ」の建設工事に着手した。まだ全体像は明らかになっていないがスマートシティーに関連する自動運転電気自動車(EV)やロボット、人工知能(AI)などの技術開発の場になるという。2025年までに高齢者や子育て世代の家族、研究者などを中心に360人程度、将来的にはトヨタ従業員を含む2千人以上が暮らす予定だ。

「ヒト中心、どこまでも未完成がウーブン・シティのぶれない軸だ」と2月の地鎮祭で話す豊田社長

 「研究者、エンジニア、科学者たちは自動運転やMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)、AIなどのテクノロジーを自由に試すことができる」。トヨタの豊田章男社長は20年1月に米国ラスベガスで開かれた電子機器の見本市「CES」でウーブン・シティの構想を披露した。

 同年3月にはスマートシティーの技術開発に向けてNTTと資本・業務提携した。自動運転技術などを搭載したトヨタの「CASE車」とNTTの5G(第5世代移動通信方式)、IoT(モノのインターネット)技術を融合。これらをウーブン・シティに取り込む方針だ。

 ウーブン・シティの建設用地は70・8万平方メートル。自動運転EV「eパレット」を走らせる専用道、歩行者と車両が行き交う道、歩道を網の目のように整備する。物流専用道路も地下に1本設ける。

 電力は地下に設けた燃料電池から供給する。CESで紹介したイメージ動画では各施設の屋根に太陽光パネルを敷き詰めていることから、太陽光発電の自家消費などにも取り組む。

 トヨタと自動運転技術の開発を担うウーブン・プラネット・ホールディングスは2月23日、ウーブン・シティの地鎮祭を開催。造成工事が本格的に始まった。

 今月2日には円建てと外貨建てを合わせて最大5千億円規模の社債「ウーブン・プラネット債」を発行すると発表した。ウーブン・シティへの設備投資に加え、二酸化炭素(CO2)削減や再生可能エネルギーの研究開発にも調達資金を充てるという。

 トヨタは様々な企業や団体へウーブン・シティの開発や実証への参加を呼び掛けている。既に打診された大手電機メーカーの幹部は電力制御の技術を提案できると見込む一方、「スマートシティーはつくるだけでなく輸出する視点を持つことが重要だ」と指摘している。

電気新聞2021年3月10日