関電、ダイヘンが提供した非接触充電システムと超小型EV(手前右は電動キックボード)

 電動交通拡大の鍵は「非接触」――。兵庫県、近畿経済産業局、神姫バス(兵庫県姫路市、長尾真社長)など官民13者は18日、播磨科学公園都市(兵庫県たつの市、上郡町、佐用町)で次世代電動モビリティーを活用した実証実験を開始した。県などは2019年から自動運転をテーマとした実証を展開しており、これで3回目。今回はガソリン車に代わり電動モビリティー3種を採用。交通の電動化を推進する関西電力も新たに加わった。

 「西播磨MaaS実装プロジェクト」のフィールドとなる播磨科学公園都市は、大型放射光施設「SPring―8」などの世界的科学技術拠点が集積。それらへ勤務する人らが居住する住宅も立地する。通勤通学時間帯以外は公共交通の運行が限られるため、多様な交通手段を統合的に利用できるMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の効果が高いと考えられる。

 昨年の実証ではガソリン駆動車を利用していたが、今回は自動運転や遠隔での車両管理と相性がいい(1)超小型電気自動車(EV)シェア(2)電動キックボードシェア(3)自動走行カート運行――の電動交通3種に一新した。

 今回から参画した関電は、グループのダイヘンと共に超小型EVや自動走行カート向けに非接触充電システムを提供した。自動走行カート向けは、公園内通路にバス停留所をイメージした「ドライブスルー」方式の充電スタンドを設置。短い距離を走っては停車する「継ぎ足し充電」を初めて検証する。

 将来、完全自動運転が実現すればドライバーが不要となるが、継ぎ足し充電が実用化できればさらに人の手を介した充電作業も不要となり、一層の運用コスト低減が望める。電池容量を最適化し、車両価格や重量を抑えることも期待される。

 一方、EVのカーシェアは不特定多数が利用するため、通常のプラグ充電では充電忘れが頻発するという。非接触充電なら所定の場所に駐車すれば自動で充電を始めるので、充電忘れによる稼働率の低下が防げると見込む。

ウェブ上で複数の交通手段を統合的に検索・予約できるシステムの画面

 また、名古屋大学が中心となり、周辺のJR駅から公園都市内を走る路線バスや、利用可能な電動交通を一括検索、予約可能なシステムをウェブに公開することも、今回の新たな取り組みだ。

 県や関電などは、より利便性が高い「MaaS体験」を提供し、効果を検証することで、少子高齢化や脱炭素化に対応する交通の実現につなげたい考えだ。

電気新聞2021年1月19日