関西電力はデマンドサイドのゼロカーボン化や新たな価値創出を目指し、モビリティー領域において、eモビリティー事業、エネルギーソリューションとMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の融合を推進している。近年、電動車両は多様化しており、それぞれの運用に適した給電方式の開発が求められている。その重要テーマの一つがEV(電気自動車)向けワイヤレス給電である。今回は当社におけるこれまでの研究開発と社会実装に向けての取り組みを紹介する。

 当社、ダイヘン、大林組は、2021年より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が行う「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」において、ワイヤレスで給電可能なEVの走行中ワイヤレス給電(DWPT)システムと都市全体へのエネルギーマネジメントシステム(EMS)の技術開発の助成事業に取り組んできた。24年で助成事業は完了し、現在は研究成果を事業化すべく検討を進めている。本事業は25年までに事業準備を進め、26年度より限定領域内で車両を利用する分野に段階的に導入する。本事業で確立した要素技術、関係省庁と整理した制度整備に加えて、グリーンイノベーション基金による研究開発を組み合わせ、今年4月からは大阪・関西万博会場でDWPTやEMSの有効性を実証していく。

1月29日に都内で行われた「NEDO省エネルギー技術開発賞」(ベストコラボレーション賞)の表彰式


 ◇産官学連携で受賞

 当社の役割は、DWPTにおけるEV充電インフラの最適設計手法の開発、RE100のDWPT制御用エネルギーマネジメントシステムの開発、EV向けワイヤレス給電の事業性評価、制度整備の推進であった。開発にあたっては民間3社に加えて、当該分野で最先端の研究を行っている東京大学、東京理科大学、大阪大学、多数の企業、研究団体から技術的協力を受けた。これら連携による研究成果の結果、今年1月29日には、「NEDO省エネルギー技術開発賞」(ベストコラボレーション賞)を受賞した。EVワイヤレス給電は次代の重要な社会インフラとなる。産学官が密に連携し、同じ目標を持って社会実装を目指していく必要があると切に感じている。

 当社は法人向けにEV導入をサポートする「カンモビパッケージ」サービスを提供している。充電インフラの整備や電気料金上昇を抑えるエネルギーマネジメントシステムを開発、普及に注力している。24年4月には、公衆エリアにEV充電器の設置を行うEV充電サービス事業「カンモビチャージ」に参入した。

 EVの給電方式として、現在主流のプラグイン方式に加え、将来的には磁界共振結合などを使ったワイヤレス方式が併用されていくだろう。EVユーザーのニーズに合わせたベストミックスとなる。レベル4.5の自動運転が実装されると、運転が無人化される。EVは給電が必要なので、給電の自動化ニーズは高まると予想している。

 近い将来、EVを活用するエネルギーソリューションとMaaSを融合する「自動給電×自動運転」が組み合わさる移動サービスの実証も各地で進むだろう。

 また、ワイヤレス給電システムを通じて、EVと電力グリッドは容易に常時接続されていく。昼間時間帯に出力抑制される太陽光発電の余剰電力の使い方の一つとなり、再生可能エネルギーの利用率向上にもつながる。

 ◇協議会で知見共有

 EVワイヤレス給電の社会実装には、技術開発や法制度、運用ルールなど解決すべき課題は多い。そんな中、24年6月には業界団体であるEVワイヤレス給電協議会を当社は発起人の1社として設立した。日本でEVワイヤレス給電の社会実装を目指していく同志が集い、知見と技術を共有している。当社もこれまでの研究成果を活かし、産学官でコラボレーションして業界発展をリードしていく。

電気新聞2025年2月3日