経済産業省・資源エネルギー庁は、将来の系統設備の在り方を探る「脱炭素化社会に向けた電力レジリエンス小委員会」を新たに立ち上げ、21日に初会合を開いた。再生可能エネルギーの主力電源化や、系統設備の強靱性(レジリエンス)確保のニーズが高まっているのを受け、脱炭素社会に向けて適切なネットワークを形成する上での課題を洗い出す。北本連系設備の増強要否や費用負担の在り方、託送料金制度の見直しなどが注目される。

 人口減少によって電力需要が先細る一方、電化の進展などで先行きに不透明感が漂う中で、事業者の投資の予見性が低下していることから、同小委では広域的・計画的なネットワーク形成の在り方を探る。電気自動車(EV)の急速充電やデータセンターなど新たな需要を生み出す設備、過疎化が進むエリアなど個別のニーズをくみ取り、具体的な対応策を示す。

 3月に運用を始める予定の新北本連系設備のさらなる増強については、電力広域的運営推進機関(広域機関)が行う規模やルート、増強の効果などのシミュレーション結果を踏まえ、費用負担の考え方などを詰める。託送料金制度では、特に欧州のレベニューキャップ制度などを参考に、効率化と投資促進が両立するような方向性を検討する。

 また、新電力や再生可能エネ事業者などプレーヤーが多様化する状況下でも、災害時の連携体制が円滑に構築できるスキームを整える。その際の費用回収の仕組みも論点になる見通しだ。

 会合の中で、エネ庁は無電柱化の推進に向けた国の施策にも言及した。地中化には地震・台風など自然災害が発生した場合の停電リスクを下げる利点があるとして、安定供給の観点から重要性を指摘した。

 同小委は総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)電力・ガス事業分科会の下に設置した。委員長には山地憲治・地球環境産業技術研究機構理事・研究所長が就き、計14人の委員で構成。一般送配電事業者、広域機関、電力・ガス取引監視等委員会などもオブザーバーとして参加する。

 これまで議論を進めてきた再生可能エネの導入拡大やレジリエンス強化、デジタル技術を活用した系統運用の高度化といったテーマごとの審議会・研究会をネットワークの観点からまとめ、具体的な政策につなげるのが狙い。春頃をめどに検討を深める方針だ。

電気新聞2019年2月22日