再処理工場では、安全対策工事が本格化している。写真は、工場本体冷却塔の地上への移設に向けた地盤工事(20年7月16日)

再延期も竣工時期の確度高まる

 
 「操業後、使用済み燃料のせん断に入る前に、工程内にたまっている(アクティブ試験)当時の洗浄液とか、高レベル廃液をしっかりと処理するのが重要だと思っている」。11月18日、日本原燃トップと原子力規制委員会による意見交換が行われた。増田尚宏社長は、使用済み燃料再処理工場をはじめ、青森県六ケ所村の同社施設における安全性、技術力向上の取り組みを紹介。現状の審査対応に加え、再処理工場の竣工後を見据えた様々な方策についても言及した。

 冒頭の言葉では、過去のアクティブ試験で発生した高レベル廃液を半分ほど処理した上で、新たな燃料のせん断・溶解を開始する意向を表明。具体的な運用方針が示されたことで、その操業が間近になっていることを感じさせた。
 
 ◇14年1月に申請
 
 再処理工場は、核燃料施設などの新規制基準施行後まもなく、2014年1月に審査を申請。今年7月の事業変更許可取得まで約6年半を要したことで、工事の見通しも不透明な状況が続いた。8月には従来の竣工時期を1年延期し、2022年度上期に変更すると公表。通算25回目となった延期について、増田社長は「今まで(の竣工予定)より、確度が高い」と、その達成に自信を示す。

 竣工延期の理由としては、再処理工場本体冷却塔に、竜巻対策の飛来物防護ネットを取り付けることに伴い、工場建屋の屋上から地上に移設する必要があるためと説明。11月時点で新設エリアの地盤改良を終えており、年内に約20メートル掘削。年明けから強固な岩盤上にコンクリートを打ち込み、防護ネットを支える人工岩盤を構築する予定だ。

 また、再処理工場の本格的な運転を10年以上行っていないことを踏まえ、運転員の技術力向上や、長期稼働停止によるリスクの洗い出しなど、ソフト面の取り組みをまとめたアクションプランを策定。項目ごとの進捗状況を各事業部長が確認するなど、その着実な実施を図っている。

 中でも、運転員の約半数が運転経験のない未経験者となっていることから、増田社長が「自信を持って運転できるよう、(未経験者に)様々な機会を与えたい」と強調。日本原子力研究開発機構のガラス溶融炉モックアップ設備(KMOC)を用いた訓練では、ベテラン運転員と未経験者を組ませることで技術と経験の継承を図った。フランスのラ・アーグ再処理工場への派遣は新型コロナウイルスの影響で延期となったが、増田社長は「パラメーターを見ながら、(炉内の)様子がイメージできると言っており、頼もしく感じる」と手応えを話す。
 
 ◇設工認効率的に
 
 一方で、22年度上期の竣工に向けた課題は、事業変更許可に続き、審査が行われる設計・工事計画認可(設工認)の取得だ。基本設計方針となる事業変更許可では重大事故の想定に時間を要したが、詳細設計に当たる設工認は、その物量そのものが問題となる。「原子力プラント5~6基分」(増田社長)の設備量となる再処理工場をいかに効率的に審査するか。規制委はそれらの施設を類型化した上で、代表的なものを審査する方針。対象施設を明確化・類型化するよう原燃に指示している。

 原燃は当初、設工認初回申請を10月に予定していたが、準備の遅れから12月に延期。11月27日には初回申請として、再処理工場本体冷却塔とMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料加工工場の建屋に関する設工認を行う方針を表明した。

 安全施設を多数配置するMOX燃料工場が「審査のひな型になる」(増田社長)と、その理由を説明している。六ケ所村の再処理事業所では、MOX燃料工場やウラン濃縮工場など、再処理工場を含めた5つの核燃料サイクル事業が規制委の審査を受けている。原燃は、再処理工場竣工にとどまらず、全ての核燃料サイクル施設の早期再開・操業という核燃料サイクル実現に向けた最終章の努力を続けている。
 

 
 7月29日、核燃料サイクルの中核となる、再処理工場に事業変更許可が交付された。これを踏まえ青森県の要望で、10月には約10年ぶりに政府の核燃料協議会が開催され、立地地域と関係閣僚、事業者らが一堂に会しサイクル政策の堅持を確認した。1985年に青森県と六ケ所村が核燃料サイクル施設の立地を受諾してから35年。立地関係者、有識者らの声とともに、「長いトンネルの出口」(戸田衛・六ケ所村長)に到達した再処理工場の現在地を俯瞰する。

電気新聞2020年12月1日

※『新章突入・操業近づく再処理工場』は電気新聞本紙で連載中です。続きは本紙または電子版でお読みください。