日本経団連は9日、2030年に向けた新たな成長戦略を発表した。持続可能な資本主義の確立を基本理念に掲げ、実現にはデジタルトランスフォーメーション(DX)や脱炭素化技術を活用した社会経済の成長、働き方の変革など5つのアクションが求められるとした。脱炭素化の領域では、政府が目指す50年までの温室効果ガスの実質ゼロ排出へ、革新技術の開発・普及に産学官の総力を挙げるべきと指摘。再生可能エネルギーへの重点支援や、30年までに新型炉の建設に着手することなどが必要とした。

 同日、都内で会見した中西宏明会長(日立製作所会長)は、エネルギー分野への投資が停滞している中で、50年までの温室効果ガスの実質ゼロ排出を目指して「民間の資金が技術革新への投資にしっかりと回る仕組みが求められる」と強調した。また、脱炭素化技術を軸にした成長を実現する上では、原子力の位置付けに関する根本的な議論が必要だと強調。原子力事業を取り巻く環境は「大きく変わっている」と述べ、小型モジュール炉(SMR)などの新型炉開発への期待を示した。

 成長戦略では再生可能エネについて、現状の手広い支援から競争力を持ちうるものへと重点的な支援に変えていく必要があると提言した。重点支援先には、屋根置き型の太陽光発電や洋上風力発電などを挙げた。また、50年までの温室効果ガス実質排出ゼロを目指すには、原子力の継続的な活用、電化率の向上、官民による蓄電池や水素技術などの革新が求められるとした。

 加えて、それぞれの革新技術について野心的な性能目標と価格目標を示し、実現するために大規模な国費の投入も長期にわたって続けていくことが必要だとした。

電気新聞2020年11月10日