電力設備の巡視点検を目的とした自律飛行は国内初

 中国電力ネットワークは12日、ドローンを活用した送電設備点検の実証試験を広島県府中市で実施した。鉄塔3基に張られた送電線(約1キロメートル)に沿ってドローンを自律飛行させ、飛行の安定性など機体性能を検証。搭載したカメラで送電線や送電線下の状況を撮影し、異常がないかを確認した。撮影した映像には送電線下の状況が鮮明に映し出されており、同社は「目的通りの映像が撮影できた」と話していた。

 同社によると、「レベル3」と呼ばれる目視外・補助者なしでの自律飛行を、電力設備の巡視点検目的で実施するのは国内初の試みだという。同社エリアの送電線亘長は約8千キロメートル。同社では、現在ヘリコプターで実施している巡視をドローンに置き換えるべく検討を進めている。

 実証試験は、高さ約60メートルの鉄塔に架かる超高圧送電線約1キロメートルの区間を使い実施された。機体は将来的なヘリコプター巡視の代替を見据え、長距離飛行が可能なルーチェサーチ(広島市、渡辺豊社長)のドローンを選定した。

 試験では、ドローンを手動で鉄塔の上空約20~30メートルまで浮上させた後、パソコンからの監視に切り替えて自律飛行を開始。送電線の上方から、送電線や線下の状況を撮影しながら飛行を続け、約10分間で離陸場所に帰還した。

 技術開発を主導するネットワーク設備部の藤山徹・技術高度化グループマネージャーは「ドローンの安定・安全な飛行と、ヘリコプター巡視で確認するのと同程度の映像が得られるなど、十分な性能があることが評価できた」と説明。今後は送電設備の立地条件を変えながら実証を積み重ねて、巡視業務への本格運用を目指すとした。

電気新聞2020年10月13日