東芝エネルギーシステムズは9月29日、火力発電機器の寿命予測、故障予兆診断技術を開発すると発表した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業で、オーストラリアの石炭火力発電所にセンサーを設置して稼働データを収集。人工知能(AI)で設備の異常予兆をつかみ、健全性も確かめる。実証では設備の健全性を確認した上で点検頻度を最適化し、発電所の保守コスト削減を目指す。実証期間は2022年3月まで。
NEDOの「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発」事業を受託した。東芝エネルギーシステムズは、NEDOと19年度から火力発電所の保守の高度化に関する技術を開発していた。今回、オーストラリアのベールズポイント火力発電所5、6号機に寿命予測技術などを適用し、有効性を確かめる。
同発電所は、東芝が1978年に発電機器を納め、メンテナンスも請け負っていた。従来は蒸気タービンや発電機、復水器の状態を目視で点検していたが、IoT(モノのインターネット)機器を導入し、遠隔で設備を監視する。
遠隔監視により現場での点検頻度を減らし、保守費用を削減する。AIが稼働データを分析して、設備の異常予兆をつかむことができれば設備更新の計画策定にも役立つ。
近年、国内の火力発電所は再生可能エネルギーの大量導入によって、系統調整力の役割が増している。急な稼働、停止といった運用パターンが増えており、設備への負荷が高まっていた。東芝エネルギーシステムズは設備故障の抑制に向けて、異常予兆の診断技術を開発する。発電機器の安定運転に寄与する考えだ。
電気新聞2020年9月30日
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