<社長に聞く・木南陽介氏>
◇対話と技術力、追求重ね/付加価値の提案、手応え

◇原点忘れず
――5月30日に設立20年の節目を迎える。あらためて受け止めを。
「未来は想像以上に変わるものだ、というのが率直な思いだ。特にそれを感じるのが再生可能エネルギー分野。12年に参入した際、(再生可能エネに関わる)時計の針を少しでも早く回したいという思いは持っていたが、これほど大きな潮流になるとは当時想像していなかった」
「20年前にマイナーだったものが、世の中のセンターに近づき、社会が重要な転換点に差し掛かっている。こうした変化を加速するためには立地地域との対話、エンジニアリング能力の両面でさらなるブレークスルーが欠かせない。持ち前の機動力を生かし、新たなソリューションを提供できるよう、引き続き力を尽くしたい」
――再生可能エネ電源開発で重視している点は。
「何を置いても、立地地域の方々に理解頂くことが重要だ。風や太陽光などの再生可能エネは全て地域の資源であり、それを使わせて頂くことで、我々の仕事が成り立っている。その原点を決して忘れてはならない」
――地域の信頼を得るためには、何が必要だと思うか。
「地域の方々は発電所そのものではなく、そこで生まれる雇用、観光需要といった付加価値を重視している。私たちはそうした思いに応えようと、地点ごとにプラスアルファの価値を生み出すように提案を作り込んできた。大変だが、とてもやりがいのある仕事だ」
「開発面では元々の自然環境をなるべく保全することをコンセプトにしている。環境配慮はもちろんのこと、経済的にみても敷地造成などの工事量が増えるとコストがかさむ。将来、再生可能エネ由来の電気の単価を安く提供する意味でも、こうした取り組みは重要になってくる」
――自然環境と調和を図った開発の具体例は。
「例えば、四日市ソーラー発電所(三重県四日市市)の開発では、周囲の生態系や固有種を保護するビオトープを設計に織り込んだ。また、岩手県軽米町のメガソーラーでは元々の地形に沿ってパネルを配置している。自社でエンジニアリング部門を持ち、こうした複雑な設計を開発に反映できるのも、当社の強みだと思っている」
◇社運かけて
――秋田県由利本荘市沖で計画している洋上風力発電事業の進捗は。
「秋田県はバイオマス発電所を地元企業と共に造らせて頂いたご縁がある。今後も地元の産業振興に貢献したいと考えていたところ、県庁の方から洋上風力開発という挑戦しがいのあるアイデアを伺い、15年から本格的に検討を進めてきた。欧州などの事例も詳細に調べた結果、洋上風力は秋田県の産業振興、漁業の活性化に必ず貢献できる事業だと確信しており、社運をかけてやり抜く覚悟だ」
――洋上風力やバイオマスの開発を巡っては、地域の大手電力会社と提携する事例も増えてきた。
「再生可能エネ電源の開発には地域の理解と信頼が欠かせない。その点、地元の大手電力会社は、長い年月をかけて地域社会と信頼関係を培ってきた経験と実績、我々にない資本力がある。これは追い付こうとしても、一朝一夕でどうにかなるものではなく、力をお借りしながら事業を前に進めたい」