
成長支えるマルチエンジニア/自前の体制、挑戦続ける
レノバはメガソーラーから木質バイオマス、地熱、そして洋上風力へと急速に事業領域を拡大している。この急成長を支える原動力が、自前のエンジニアリング体制だ。
大手ゼネコンを経て12年に入社し、CTOとして技術部門を束ねる小川知一常務執行役員・エンジニアリング本部長は、「マルチエンジニア志向を持ち、熱意にあふれる技術者がそろっていること」が、他社にないレノバの特徴だと語る。
一般論として、技術者は土木、建築、機械、電気など専門領域を持つ。レノバの技術陣もその点は同じ。違うのは一つの領域にこだわらず、幅広い専門性・スキルを備えた人材が集まっている点だ。
◇情熱と視野

再生可能エネ電源の開発を円滑に進めるためには設計・施工・運用の知識だけでなく、環境・生態系との調和、地域社会との合意形成など、広範な課題への対応が求められる。それらに対する最適解を出せる幅広い視野と情熱を持った人材が「マルチエンジニア」であり、開発の牽引役を担っていると小川氏は説明する。
その技術力を示す一例が、19年12月に竣工した岩手県軽米町のメガソーラーだ。山あいの広大な敷地に計12万8800キロワットの太陽光パネルを設置する一大事業に当たり、レノバは「もとあった地形を可能な限り崩さない」開発方針を掲げた。
土地の傾斜・形状に合わせて設備を造るため、点在するような形でパネルを敷く。これに伴い、治水目的で29カ所の調整池を設置するとともに、結晶シリコン系と化合物系の太陽光パネルの最適な配置計画、および開発当初に国内実績のなかった小型パワーコンディショナー(PCS)の採用を行った。
近年拡大している木質バイオマス発電設備の開発にも、こうしたエンジニアリング能力が生かされている。7万5千キロワット級の大型発電所を5カ所開発する計画だが「毎回新たな試みを取り入れている。同じものは一つとしてない」(木南氏)。リサイクル工場から続く、半歩先を行く姿勢の表れだ。
◇思い一つに
このトップの姿勢に応えるため、同社技術陣は徹底した海外事例調査やデータ収集を実施した。例えば、事業地周辺の漁業関係者との対話から課題を抽出、発電所からの排水による海水温の上昇を防ぐために、国内実績がなかった空冷式の海外製ボイラーを採用したり、バイオマス燃料貯蔵用に農業用サイロを転用するなど、試行錯誤を重ね、設備の発電効率向上やコストダウンを実現している。
新たなことに挑戦し続けるのは、手間がかかるようにも思えるが、小川氏は「リスクを取ってでも、新たなことに挑戦できるのは技術者冥利に尽きる。エンジニアにとって最高の環境だ」と力を込める。技術陣がトップと思いを一つにしていることも、レノバの隠れた強みの一つといえそうだ。