BWRの新規制基準適合性審査は進んでいるが、まだ再稼働には至っていない(写真はテレビ会議方式で4月中旬に再開した審査会合)

 東北電力女川原子力発電所2号機の安全対策工事完了が2022年度になるなど、BWR(沸騰水型軽水炉)再稼働の遅れがますます顕著になっている。12年3月から続く国内BWR稼働ゼロ期間の「10年超え」の可能性も出てきた。最も早く再稼働するBWRにも注目が集まるが、現状での筆頭候補は中国電力島根原子力発電所2号機になったといえそうだ。

 13年の新規制基準施行以降、PWR(加圧水型軽水炉)は9基が再稼働したが、BWRはいずれも再稼働に至っていない。12年3月26日に東京電力柏崎刈羽原子力発電所6号機が停止してから、国内BWRは稼働ゼロの状況が続く。22年3月までに1基も再稼働しなければ、BWR全基停止期間が10年を超えることになる。

 稼働ゼロが続いているBWRの中で、再稼働が比較的近いと考えられていたのが女川2号機だ。女川2号機は原子力規制委員会による原子炉設置変更許可を今年2月に取得。この時点では安全対策工事完了予定を20年度としており、工事計画認可(工認)の審査や地元同意がスムーズに進めば、早期再稼働があり得ると考えられていた。ただ、工事完了予定時期を22年度に変更したことで、再稼働は少なくとも2年ほど遠のいた。

 他プラントでは、BWRで唯一、設置変更許可と工認を取得している日本原子力発電東海第二発電所も、具体的な再稼働時期がまだ見通せない。今年1月には、安全対策工事の完了時期を21年3月から22年12月に変更している。再稼働に向けては、東海村など6市村との事前協議によって実質的な事前了解を得る必要もあり、手続きには時間がかかりそうだ。

 BWRで初めて設置変更許可を取得した柏崎刈羽6、7号機は、まだ工認の取得に至っていないが、7号機の工認の審査が始まっている。安全対策工事の完了目標時期は7号機が20年12月(6号機は未定)。工認審査を踏まえた工程変更が生じなければ、工事完了が近づく。

 ただ、柏崎刈羽6、7号機の場合も地元同意プロセスの先行きが見通せない。新潟県は再稼働判断の前提として、原子力の安全性などに関する「3つの検証」を進めている。花角英世知事は、検証委員会に対し「期限を切らずに議論を尽くして頂きたい」というスタンス。3つの検証に関する総括検証委員会が知事の任期(22年6月)をめどに検証結果を示す方針であることを、歓迎するような発言もしている。

 これら再稼働の見通しが明確になっていないプラントを横目に、最も早く再稼働を果たす可能性が高まってきたのが島根2号機だ。島根2号機は設置変更許可の審査が続いているが、既にSs(基準地震動)が固まり、現在はプラント側の審査が精力的に行われている。

 安全対策工事も比較的順調で、工事完了予定時期は20年度。中国電力は工事完了予定時期をこれまでに7回変更しており、今後も変更が生じる可能性は否めないが、防波壁などの大型の工事は徐々に完了している。

 今後、工認を含めた審査と再稼働を巡る地元判断が円滑に進めば、「BWR稼働ゼロ」の継続に歯止めをかける存在となる可能性は高い。

電気新聞2020年5月11日