車両に搭載されたコンプトンカメラ。360度全方位の放射性物質の分布を可視化する

 日本原子力研究開発機構は3月27日、360度全方位を対象に放射性物質のホットスポットなどを可視化するモニタリングカー「iRIS―V」を開発したと発表した。ガンマ線可視化装置(コンプトンカメラ)で把握した車両周辺の放射線源の分布状況をパノラマ写真と組み合わせ、3次元的に分かりやすく表示する。80秒程度と短時間で測定でき、東京電力福島第一原子力発電所周辺の除染や廃炉作業の円滑化にも貢献しそうだ。

 従来、放射線源はサーベイメーターを使い、徒歩で把握していた。ただ、膨大な時間がかかる上、作業者の被ばくリスクも非常に大きい。

 「iRIS―V」には、車両を中心に360度全ての方向について放射線源の分布状況を把握できるよう、コンプトンカメラ144台を設置。レーザーで車両周辺の3次元画像を作成するセンサーも搭載している。

 コンプトンカメラの情報と3次元画像を統合すれば、放射線源や放射性物質の分布状況を3次元的に可視化できる。測定時間も約80秒と大幅に短縮した。原子力機構が行った実験では、半径5メートル程度の範囲で対応できることを確認。現状は測定時に車両を停止させる必要があり、走行しながらでも測定できるよう改良したい考えだ。

電気新聞2020年3月30日