◆低コスト化進む洋上風力/デジタル化の利点大きく

JERAが2019年2月に参画した台湾初の商用洋上風力発電プロジェクト「フォルモサ1」
JERAが2019年2月に参画した台湾初の商用洋上風力発電プロジェクト「フォルモサ1」

 スターク氏「洋上風力のコスト削減は急速に進んでいる。英国では11年に千キロワット当たり150ポンドだった発電コストが、19年に入札された23~24年稼働予定のもので40ポンドになった。同時に、LCOE(Levelized Cost Electricity=平準化発電単価)に占めるオペレーションコストが40%になるなどコスト構造が変化してきた。これは、長寿命化や洋上風力に関するサプライチェーンの構築が進んだことに起因していることは明らかだ」
 「これから普及段階に入るアジア地域は欧州の先例を学んでおり、サプライチェーンの構築が円滑かつ迅速に進むかもしれない。そうすると開発コストは下がり、導入スピードも速まる。JERAはLNG火力や洋上風力などの建設・運用で様々な経験を積んできた。アジア地域の洋上風力開発に、その知見をどう生かすか」

 ゴーデンカー氏「グローバルで培った専門知識を持ち込み、アジア地域の洋上風力開発に役立てていきたい。我々が得意とするのは、様々なプレーヤーとのパートナーシップの構築だ」
 「これまで、LNGプロジェクトの開発やエネルギートレーディングなどの分野で、米国シェブロン、エクソンモービル、英国EDFトレーディングなどとパートナーシップを組んで、成果を上げてきた」
 「様々な企業と連携してサプライチェーンを構築することにかけては、最高の専門知識を持っていると自負している。さらに、トヨタ自動車の『カイゼン』を取り入れたO&Mの経験も豊富で、そのノウハウを洋上風力に生かせれば、運用コストの削減に効果的だと思う」
 「我々は日本国内でも洋上風力を手掛けていきたいと思っているが、日本に洋上風力を根づかせ、拡大していくためには、二つの課題がある。一つは、洋上風力で海域を利用する場合の入札制度について、もっと透明性を高めること、二つ目は、開発者が現地で許認可を得るための労力が大きすぎることである」
 「欧州でも、開発者が現地の利権調整を担う国はあったが、導入が立ち遅れた。その点、私の母国オランダは非常にうまくいった。洋上風力の建設・運用に必要な許認可を政府があらかじめ取得するため、民間企業の参入リスクが小さい。建設が進むとホテルやレストランができ、地元経済も活性化した。日本にとって洋上風力は貴重な天然資源の一つ。それを活用するため、こうした他国の経験を生かすべきだ」

 スターク氏「英国ではこの5年間で、洋上風力のLCOEのコストが約半分に低減した。これは遠隔操作と自動化の効果が大きい。このように、デジタル技術は非常に大きなメリットをもたらす。バリューチェーンの最適化に向け、今後どのように活用していくか」

 ゴーデンカー氏「デジタル技術の活用は非常に重要なテーマで、経営のレベルで合意ができている。電力に詳しいデータサイエンティストの力も借り、精力的に進めている。ただ、まだ初期段階であることは否めない。先進的な企業の事例を学んで、対応していきたい。他の電力会社も積極的に人工知能(AI)などを取り入れている」
 「デジタル化の一環として今年、我々のコアシステムをクラウドに移行した。様々なデータを一元化し、活用するための第一歩だ。一定の成果が出たら、取り込むデータの種類を増やし、その分析結果を基に、さらに最適化を進めるというサイクルを回したい」
 「我々はまずコアシステムから始めたが、洋上風力のO&Mや、電力系統の運用、再生可能エネルギーと蓄電池の制御など、様々なデータを分析することで有望なソリューションを考案できるかもしれない」

 スターク氏「再生可能エネと蓄電池の組み合わせについて話があった。蓄電池の事業化に向けて具体的な動きはあるか」

 ゴーデンカー氏「一例を挙げると、(19年2月に出資した)英蓄電池事業者のゼノベの協力も得て、蓄電池を多様なシーンに活用することを考えている。ほかにも、EV(電気自動車)充電スタンドの充放電管理なども有望なソリューションになるかもしれない。我々にとって蓄電池が、将来的に大切なビジネス要素になることは間違いない」

 スターク氏「日本の温室効果ガス削減目標の達成に向けて、JERAが踏み出した第一歩が大きなうねりになることを期待している。洋上風力を開発するモデルをつくり、アジア地域全体の脱炭素化にも貢献してほしい」