再エネ導入レベルごとに技術要件を整理。九州は第3段階

 
 前回は、グリッド・デモクラシーにおいてグリッド利用ルールであるグリッドコードが必要であり、日本でも再生可能エネルギー主力電源化に向け、風力・太陽光発電について、グリッドコードを整備する取り組みが始まったことについて述べた。しかしながら、再エネ接続に関する技術は進歩するものであり、これに伴いグリッドコードを絶えず進化させていかなければならない。次回にかけて、将来のグリッドコードに関わる技術的展開について述べる。

表_VRE導入_4c
 国際エネルギー機関(IEA)は、風力・太陽光発電等変動性再生可能エネルギー(VRE)の導入レベルについて、系統運用への影響度合いに応じて4つの段階(フェーズ)を定義し、それぞれの段階でどのような技術的要件が必要になるかを整理した=表。

 最高の第4段階には、アイルランドとデンマークがランキングされ、九州は第3段階、日本の他の地域は第2段階に位置付けられている。
 

欧州では接続だけでなく、系統運用や電力市場の要件も含む

 
 欧州共通ネットワークコードは、送電事業全体に関わる3分野――Grid Connection(系統連系)、System Operation(系統運用)、Market(電力市場)――の全体を体系的に規定している。接続だけでなく運用、市場の要件も含む体系になっているのが特徴であるが、これまで日本の系統連系に関わる規定は、主として1番目の系統連系に相当するものであった。

 近年、太陽光発電では通信による出力抑制が要件化され、風力発電について検討中のグリッドコードでは、最大出力制限や周波数上昇時の出力抑制の要件化など、運用に関する事項が取り上げられている。これは、表の各段階における技術要件に示されるように、VREの導入量の増加に伴い、VREに対しても系統の安定運用に貢献することを求めており、詳細がグリッドコードに組み込まれていくことになっていくと考えられる。

 

米カリフォルニア州ではAdI導入を義務化

 
 太陽光発電の導入が非常に顕著である米国カリフォルニア州では、アドバンストインバーター(AdI)の導入が義務付けられ、州のグリッドコードであるRule21に組み込まれた。

 太陽光発電は直流電源であり、交流のグリッドに接続するためにインバーターを介する必要がある。AdIはこれを高機能化したもので、
電圧・周波数の変動時に運転を継続する機能(FRT)
、周波数上昇時出力抑制機能、電圧―無効電力(Volt―Var)制御機能、出力変化率制御、システム状態監視・通信など様々な機能を提供し、表の第4段階までの技術要件のいくつかをカバーする。これらの特性は、いくつかの数値によって定義することができ、通信によって遠隔で数値を変更し、系統状態に応じた望ましい特性に設定することが可能である。この技術は蓄電池システムなどに付帯するあらゆるインバーターに適用できる。

 代表的なものとして、Volt―Var制御機能を紹介する=図。

図_VoltVar制御機能_4c AdIはグリッドとの接続点で、電圧と周波数をモニターしている。この参照電圧がP3より大きい場合、無効電力を配電系統から吸い込むことによって電圧を下げる働きをする。一方、参照電圧がP2より小さい場合は、無効電力をグリッドに注入し、電圧を上げる効果がある。この他にも、電圧や周波数を参照して有効電力を制御する機能などがあり、これらを組み合わせて複合的に使用することが可能である。

 このような機能により、VRE大量導入に伴う周波数や電圧の変動を緩和する効果を期待でき、連系可能量拡大に貢献するであろう。

【用語解説】
◆Rule21
配電系統に接続される電源設備と電力貯蔵設備を対象とする、機能、性能、計測、通信などに関する規則。カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)の所管で随時改定され、太陽光発電と蓄電池に関する米国において最も高度な要件の一つになっている。

◆事故時運転継続(FRT)要件
分散電源が電力系統に広域・大量に連系された場合、電力系統の擾乱により一斉に解列すると電力品質に大きな影響を与える。このような一斉解列などによる問題を防止するため、運転継続性能を要件として求めるもの。

電気新聞2019年12月16日