大崎クールジェンではCO2分離・回収設備。燃料中のCO2を回収する
大崎クールジェンではCO2分離・回収設備。燃料中のCO2を回収する

 大崎クールジェンプロジェクトの第2段階となる「CO2分離・回収型酸素吹きIGCC実証試験」が12月26日からスタートした。酸素吹き石炭ガス化複合発電(IGCC)と二酸化炭素(CO2)分離回収の組み合わせは世界初となる試み。CO2回収効率90%、回収CO2純度99%という目標がクリアできるか確認していく。第2段階の実証試験は20年度まで行う見通し。

 大崎クールジェンプロジェクトは、中国電力とJパワー(電源開発)が共同出資する大崎クールジェン(広島県大崎上島町、木田一哉社長)が進めている実証事業。革新的低炭素石炭火力発電であるCO2分離・回収型の石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)を実現するため、第1段階の「酸素吹きIGCC実証」、第2段階「CO2分離・回収型酸素吹きIGCC実証」、第3段階「CO2分離・回収型IGFC実証」とステップを踏みながら実証試験を行っている。

 第1段階は17年3月から実証試験が始まり、19年3月に実証試験が終了した。石炭から生成した石炭ガス化ガスを燃焼させることで、ガスタービンや蒸気タービンを駆動し、熱効率40.8%(送電端、HHV)、負荷変化率毎分16%の成果を確認することができた。

 第2段階では、IGCCの燃料である石炭ガス化ガスからCO2のみを回収し、水素リッチ燃料として活用する技術の実証試験に取り組む。燃焼させる前の燃料からCO2を取り除くことで、効率の良いCO2分離・回収が期待できる。

 経済産業省が9月に発表した「カーボンリサイクル3Cイニシアチブ」では、実証試験設備が立地する広島県大崎上島にカーボンリサイクルの研究拠点を設けるとしており、第2段階で回収したCO2の有効利用も期待されている。中国電力とJパワーでは、北九州市のトマト菜園などにCO2を利用する方向で検討を進めている。

 大崎クールジェンの木田社長は「高圧力で濃度の高い状態からCO2分離・回収することで、効率的にできると考えている。いかにコストを下げられるかが(CO2分離・回収技術の普及にとって)一番大きな課題となるので、実証試験を通じてその部分に取り組んでいきたい」と意気込みを示している。

電気新聞2019年12月25日

※2019年12月26日から実証がスタートしたため、記事を一部修正しています。