電気事業連合会の勝野哲会長は13日の定例会見で、脱炭素社会に向けて「原子力発電事業のビジョンを出したい」との考えを示した。脱炭素化への電源の選択肢の中で「技術的に成立しているのは原子力」と指摘。原子力の人材・技術や産業基盤は、事業の将来の在り方が見えていないと維持し続けられないとの認識を示した。原子力事業者、学協会、関係団体と協力して「どういう形で原子力事業が将来に向けて進んでいくのかをしっかりと示さなければならない」と強調した。

 政府が今年6月に閣議決定したパリ協定に基づく長期低排出発展戦略(長期戦略)は、2050年までの温室効果ガス排出80%削減と、今世紀後半の実質ゼロ排出を目指している。原子力は「実用段階にある脱炭素化の選択肢」と位置付けた。

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 勝野会長はこういった政府方針を踏まえて、事業者としてビジョンを策定する必要性に言及。より安全性を高めた軽水炉の活用や、小型モジュール炉(SMR)の開発が海外で進んでいる状況も勘案する必要があるとの認識を示した。

 二酸化炭素(CO2)排出の観点から批判もある石炭火力については、電源構成比率目標がある30年度までは「高効率化を進めながら、しっかりと活用しなければいけない」と指摘。その先の脱炭素化を目指す場合、同期発電機として系統安定化に果たす役割に言及した上で、CO2を貯留するのか、水素などの代替技術が発展するのかなど「複線的なシナリオを考え、(技術革新の動向を見ながら)判断する必要がある」と述べた。

 関西電力役員らの金品受領問題を受け、電力業界のコンプライアンス(法令順守)を改善、徹底するため立ち上げた「企業倫理等委員会」の第3回会合が13日に開かれたことにも触れた。関電と中部電力が公表した規定・指針の内容を踏まえ、各社トップによる法令順守の徹底をあらためて確認したと述べた。

電気新聞2019年12月16日