「Giraffe」はサブクローラーの角度を変えられる
「Giraffe」はサブクローラーの角度を変えられる

 東京電力ホールディングス(HD)福島第一原子力発電所の廃炉に、福島県発の技術や製品を活用する動きが活発化している。エイブル(大熊町)が装置を開発し、施工している1・2号機共用排気筒解体工事が代表例だ。6日には南相馬市の福島ロボットテストフィールド(RTF)でロボット関連技術の展示実演会が開かれ、廃炉関係者が多数来場した。地域が復興に向けて廃炉・除染の推進に関わり、産業の集積にもつなげる観点から、技術の“地産地消”に期待が集まっている。

 展示実演会は、ふくしまロボット産業推進協議会の福島県廃炉・災害対応ロボット研究会(大和田野芳郎会長)が毎年開催し、今年で5回目。同研究会は廃炉・除染、災害対応分野への参入を目指す県内企業を支援する活動を行う。会員は10月時点で106者。前身組織が発足した2013年6月以降、会員による受注獲得件数は合計31件と着実に増えている。

 開会に当たり、県幹部は「廃炉・除染に携わる企業の皆様に、県内の優れた技術、特徴ある取り組みを知ってもらいたい」とアピール。東電HD執行役員の師尾直登・福島第一廃炉推進カンパニーシニアバイスプレジデントは「燃料デブリの取り出しなどでロボット技術、遠隔操作技術の重要性が一層高まっていく。継続的にお力添えを頂きたい」と応じた。

 今回の展示実演会は福島に本社・拠点がある22者が出展した。軽快な動きで目を引いたのが、アイザック(会津若松市)の小型電動ロボット「Giraffe(ジラフ)」。メイン、サブ合わせて6つのクローラーを備え、砂地や草地のような不整地を走行でき、耐水性も高い。階段は最大45度まで昇降可能だ。

 本体350万円という低価格が強みで、顧客の要望に応じてオプションを装備する。メガソーラーの除草に導入されたほか、建設現場の下見、下水設備点検などの用途で引き合いが来ているという。

 藤倉コンポジット(東京都江東区)の使い切り型非常用モバイル充電器「アクアチャージ」は、災害対応で関心を呼んでいた。コップ1杯(285ミリリットル)の水があればスマートフォン約2台分の充電ができる。河川や水たまりの水も使える。この技術を応用して開発中の「液体検知センサー」も参考出展した。漏えい水などの液体に触れると自ら発電して信号を発する仕組みで、電源が要らない。

 福島三技協(福島市)は、LEDの光を使った可搬性に優れる高速通信システム「LEDバックホール」を出展した。災害時やイベント時の臨時通信設備として、また、電波の干渉やマルチパス(多重波伝送路)を避けたい場所での使用が考えられる。

 ほかにも、放射線測定、物資輸送、水中点検に使うドローン、高騒音の環境でも確実に通話できる「骨伝導ヘッドホン」など、福島ゆかりの様々な技術、製品が紹介された。会場には福島第一廃炉に携わる東電グループ、協力企業の社員らが訪れ、現場のニーズに照らしながら熱心に質問や意見交換をしていた。

電気新聞2019年11月19日