◇参加の東京ガス、若手が活躍

太田 茜さん
太田 茜さん

 JECは参加する日本企業にとって欧州スタートアップとの接点を得るだけでなく、人材を育てる貴重な場でもある。JEC2019を共催した東京ガスでデジタルイノベーション戦略部に所属する若手の太田茜さん=写真=は、SMAPエナジーのスタッフとともに欧州企業の選定プロセスを経験したことが「とても良い勉強になった」と振り返る。
 太田さんは同じ部門に所属する福田逸郎さんとともに、SMAPエナジーが提示した企業リストをもとにスクリーニングや事前調査を行った。企業のホームページなどから情報を集めるのが第一歩だが、そもそも英語版を持たない企業もあり、国内外のスタートアップに特化したデータベースなどを活用しながら作業を進めた。
 その後、実際にロンドンを訪れ、SMAPエナジーのスタッフとともに欧州企業との面談を進めた。
 先方の事業・財務内容、強みがどこにあるか、日本市場参入の障壁は何か…。事前に様々な論点で議論したことで「8月の本番では提携に向けて、より深い話ができた」と太田さんは話す。
 イベント以降は東京ガスグループの関連部門に、自身が調査したスタートアップの技術や特徴を伝え、協業の余地がないかなどディスカッションを続ける。「現地で話した企業の魅力、彼らの熱意を東京にどう伝えるか。難しいですが、面白いチャレンジだと思っています」
 

◇業種超え 広がるつながり

 JECは電力、ガスなどの業種を超え、日本企業の横のつながりを深めるユニークな役割も担う。6~7月にはこうした試みの一環として、スポンサー企業の若手社員30人が参加するアイデアソン「JECユース」を開催した。
 アイデアソンはアイデアとマラソンを組み合わせた造語。様々な分野から人を集め、特定の課題に対するアイデアを出すために、グループディスカッションなどを繰り返すイベントだ。

若手チームによる白熱したプレゼンテーションが繰り広げられた
若手チームによる白熱したプレゼンテーションが繰り広げられた

 JECユースの課題は欧州スタートアップの日本市場展開案を策定すること。東京ガス、エネチェンジを含む7社から集まった若手が企業混成で5チームに分かれ、2週間かけてスタートアップの事業プランを練り上げた。
 ハイライトは7月5日に都内で開かれた発表会。5つのチームがそれぞれ熱の入ったプレゼンテーションを繰り広げ、城口洋平・エネチェンジ会長、門正之・東京ガス執行役員らが一つ一つに講評を行った。優秀チームの表彰式などを経て、会場で行われた懇親会でも業種の枠を超えた若手同士の交流が広がった。
 

◇受賞の欧州4社、早期日本参入に期待

 JEC2019に招待されたスタートアップ19社はEV、蓄電池VPPなど多彩な領域で活躍する第一線の企業ばかり。なかでもスポンサーの日本企業の投票で選ばれた4社(EVボックス、コネクテッド・エナジー、へリアテック、KiWiパワー)は欧州での豊富な事業実績を有し、日本市場への早期参入が期待されている。
 このうちEVボックス(オランダ)とコネクテッド・エナジー(英国)は、有望な低炭素化技術として注目度が年々高まるEV関連の技術・サービスを持つ。EVボックスは、低速から超高出力まで多彩な充電設備を世界70カ国で提供する。コネクテッド・エナジーはEVで使用した中古蓄電池を分解せず、二次利用することで、新品より安価なシステムを提供する技術に強みを持つ。
 へリアテック(ドイツ)はこれまで設置が難しかった建物の壁面などに、簡単に貼り付けて利用できる薄膜の有機太陽電池の開発・製造・販売を手掛ける。同技術で世界屈指の発電効率を達成しており、量産化の準備を進めている。
 KiWiパワー(英国)は蓄電池を活用して、電力会社や大口需要家向けにDR(デマンドレスポンス)サービスを提供する。09年の創業後、10年間で同分野におけるリーディングカンパニーへと成長を遂げた。

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