対談する門氏(右)と城口氏
対談する門氏(右)と城口氏

 ――イベントにはEV(電気自動車)系のスタートアップも多数参加していましたね。旬のテーマだと感じました。
城口 日本市場は英語で得られる情報が少なく、パートナーを探すのが難しいのですが、規模の点で大きな魅力がある。EV系のスタートアップはメーカーが新車を投入する2020年のオリンピックに合わせて日本に参入したいという強い思いを持っており、イベントでも熱意を感じました。
門 特に日本側から評価が高かったのがEVボックス(メモ*2)でしたね。充電システムをアピールする会社が多数参加していたのですが、私たちからすると、その技術が電力事業とどう関わりを持つかを知りたい。EVボックスは分散した充放電のケーパビリティーを組み合わせて社会、お客さまにどのような価値を提供するかというビジョンを持つ企業だと感じました。
城口 イベント後、オランダの本社を視察したのですが、自前で設計チーム、ラボを抱え、ものづくりをおろそかにしない姿勢が印象的でした。各国企業を呼んでワークショップを開き、EVや充電システムの売り方や課題をレクチャーするなど、ネットワークを広げる手腕にも長けています。
一方、同じく旬のテーマではあるものの、VPP(仮想発電所)系は欧州との事業環境の差が大きく、日本に持ち込むハードルが高いとあらためて感じました。もちろんそうした違いがあることも、イベントなどで率直に話す関係ができて初めて分かることですが。

門氏

◇新興市場で協業も

門 確かにVPPは日本でもいつ本格的な市場が立ち上がるか読みにくく、難しい領域でしょうね。ただスタートアップと組んで開拓する市場は、日本だけとは限らない。これからインフラ整備が進む東南アジアなど、新興市場に一緒に出ていくと発想を切り替えると、別の出口があるかもしれません。
 ――日本のユーティリティーが欧州スタートアップと組んで海外に打って出る。ぜひみてみたい光景です。
門 東南アジアを例にとると、エネルギー事業という観点で私たちの競争相手が数多くいます。そのなかで特色を出し、現地の事業に深くコミットしようと考えると、発電・ガス供給事業にとどまらず、モビリティーなど他の分野も取り込んで社会課題を解決するような、新たなアプローチが必要になるかもしれません。スタートアップと組み、そうした取り組みを進めることも考えてみたいですね。

◆メモ*2)EVボックス
EVボックス=本社はオランダ・アムステルダム。EV向け充電設備の製造・販売を手掛け、70カ国でサービスを提供。ローカライズへの優れた対応力を持つ。低速から超高出力の高速充電器、それらを制御するソフトウェアをワンストップで提供。17年に仏大手のエンジーが買収し、世界展開を進めている。