センターの要員が遠隔操縦するロボットは重たい台車をいとも簡単に持ち上げた
センターの要員が遠隔操縦するロボットは重たい台車をいとも簡単に持ち上げた

 日本原子力発電は、同社が主体となって運営している「美浜原子力緊急事態支援センター」(福井県美浜町)を10月、報道陣に公開した。同センターは、原子力災害対応の支援拠点として2016年12月に開所。無線操縦可能なロボットや重機、ドローンなどを備え、原子力事業者の事故対応要員に操作訓練を行ってきた。同センターの白石浩一所長は「事業者訓練の改善を進めてきたが、内容がほぼ定着した」と語る。今後は、新たな資機材の導入や訓練内容のさらなる改善に努めつつ訓練実績を積み重ねていく方針だ。

 原電と電力9社、日本原燃が運営する同センターは、東京電力福島第一原子力発電所事故を教訓に、高放射線量下での災害対応が可能な組織として設けられた。万が一の原子力災害時には、被ばく低減のため、遠隔操縦可能なロボットなどで現場状況の偵察や空間線量率の測定、がれきの撤去などを事業者と協働で行う。これら緊急時の活動を円滑に行うため、平常時には事業者の要員に対し、ロボットなどの操作訓練を行っている。

 17日は、センターに導入している資機材を遠隔操作で動かすデモが披露された。同センターの要員が遠隔操縦するロボットが階段を上ったり、重量物を持ち上げるといった動作をなめらかに実行。高所のドローンで、放射線量データを位置情報とセットで収集・記録する実演も行われた。

 センターが備える資機材は、ロボットや重機、ドローン合わせて13台。ドローンは、開所時よりも飛行性能の高い機体を新たに採用済み。重機も先端のアタッチメント取り換え時に要員の被ばくを低減するため、ワンタッチで脱着できる装置の導入を順次進める計画だという。

 事業者を対象とした訓練は、ロボットなどの簡単な操作を会得する初期訓練、ロボットでバルブのハンドルを回すといった応用をマスターする定着訓練に分かれている。初期訓練の受講者は9月末時点で延べ876人。定着訓練も毎年約200人を受け入れており、事業者の要員育成に貢献している。白石所長は「いかなる状況にも臨機応変に対応するのが我々のミッション。そのための訓練をしている」と強調。訓練内容については「まだ改善の余地があるが、実績ができてきた」と話す。

電気新聞2019年10月24日