EV向け無線給電技術が新局面を迎えている(写真は新たなIWMとその仕組みを説明する藤本准教授)
EV向け無線給電技術が新局面を迎えている(写真は新たなIWMとその仕組みを説明する藤本准教授)

電動車向けの無線給電技術が進展している。東京大学やブリヂストン、日本精工など5者が10日、走行中に無線給電が可能な電気自動車(EV)用インホイールモーター(IWM)の開発で、受電性能を高めた第3世代のIWMを開発したと公表。ホイール内部にモーター、受電回路が入るIWMで、モーターの設計やパワー半導体などを改良。受電性能は第2世代の約2倍の20キロワットとなった。2022年まで車両全体を評価し、25年に実証実験に移行する。研究のさらなる進展へ他の企業・団体とも連携する。

 開発にはローム、東洋電機製造も参加している。5者は17年3月までに路面に配置したコイルから走行中に無線で受電するIWMを開発した。

 EVへの無線給電技術は、車体底部にモーターや受電回路を設置する方法が主流だが、乗車人数によっては走行中に車体が上下する。この場合、路面のコイルとの距離が変化することで給電効率が低下する。一方、ホイールに給電する場合、路面との距離にほとんど変化がなく、安定的に受電できる。

 開発した第3世代のIWMは、第2世代でホイール脇に配備していた受電回路などを小型化してホイール内に設置。モーターは設計を改良して、走行性能が第2世代の約2倍となる1輪当たり25キロワットを実現した。

 10月、東大柏キャンパス(千葉県柏市)で会見した東大大学院新領域創成科学研究科の藤本博志准教授は、「無線給電が普及すれば、走行中にEVの電池切れが少なくなる。搭載する蓄電池の大容量化が不要でEV価格も低下する」と強調した。

 今後はIWMの研究開発を加速するため、特許をオープン化し広く連携先を拡大する考え。

電気新聞2019年10月15日