超臨界CO2サイクル発電の試験設備(ネットパワー、マクダーモット提供)
超臨界CO2サイクル発電の試験設備(ネットパワー、マクダーモット提供)

 東芝エネルギーシステムズは、2020年代前半に超臨界CO2(二酸化炭素)サイクル火力発電技術の商用化を目指す。同技術は天然ガスコンバインドサイクル並みの発電効率を達成しつつ、高圧のCO2を回収できるのが強み。米国では石油増進回収(EOR)への税控除が拡大し、そこで使うCO2も需要増が見込まれる。東芝はこうした状況を追い風に石油会社などとの共同実証を進め、早期の商用化につなげたい考えだ。

 超臨界CO2サイクル発電は燃焼器にCO2と天然ガス、酸素を投入する。CO2を高温・高圧で液体と気体の両方の性質を備える「超臨界」の状態にしてタービンを回す仕組み。CO2がシステム内を循環する過程で、天然ガスの燃焼による増加分をほぼ100%回収できる。
 
 ◇厳しい条件
 
 東芝は12年に米石油大手傘下の企業が出資するネットパワーや電力大手エクセロン、エンジニアリング大手マクダーモットと共同開発で合意。テキサス州に実証設備を設けて試験を続けてきた。

 超臨界CO2タービンの実現には超高圧の300気圧、入り口温度1150度といった厳しい条件が求められる。

 東芝で超臨界CO2タービン事業推進室長を務める佐々木隆統括技師長は、技術開発が「ガスタービンと蒸気タービンの“難しいところ取り”だった」と表現する。

 ガスタービン翼の冷却や超々臨界圧(USC)石炭火力の超高圧対応で培った技術に加え、レーザー着火といった新技術も投入。実証設備で昨年までに燃焼試験を行い、今年中に発電試験へと進めたい考えだ。

 実証には石油大手なども資金を投じて「本気で実現を目指している」(佐々木氏)。その背景には、米国でCCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)を行う事業者に対する税控除が拡大することがある。18年に成立した法律には税控除額をEORで従来の1トン当たり10ドルから35ドルへ、貯留で同20ドルから50ドルへと大幅に引き上げることが盛り込まれた。
 
 ◇需要拡大も
 
 この対象となるのが24年1月1日以前に建設が始まった設備。期限は今後延長される可能性もあるが、まずはこのスケジュールを念頭に石油会社などがCO2調達先の確保に動いている。

 元々、石油生産が盛んな米国ではテキサス州を含めてEORが事業化している。輸送パイプラインも整備が進み、今後はさらなるCO2需要の拡大も予想される。

 東芝はこうした動向をにらみ、超臨界CO2サイクル発電を高効率な発電とCO2回収が行える“一石二鳥”のシステムとして商用化を目指す。

電気新聞2019年8月6日