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 工場や医療の現場でフィジカルAIを導入する場合、低遅延が求められ、データを取得しデータの処理結果をフィードバックする現場の近くにコンテナ型DCが設置されるケースや、ユーザー側の機能を絞ったエッジコンピューティングまで、将来のDCの利用形態は多様化と多層化が進むものと思われる。

 さらに、バックアップ用も含めると、海外のAI活用向けのDCを国情の比較的安定した我が国に設置するケースも想定される。

 現在、我が国のDC建設は数十万キロワット級までが進んでいるが、今後さらに拡大すると考えられる。

 以下、大規模DCの建設と系統接続が急増する米国など海外事例から、我が国も参考とし得る課題や対応事例について概説する。


 ◆接続リードタイムのギャップ

 大規模DCの系統接続の特徴は、DCの稼働開始ニーズが2~3年であるのに対し、大規模需要の系統増強には10年以上を要する場合もあるという、時間軸のギャップが大きいことである。

 大手テックがAI覇権に向けて大規模DCの早期稼働を競う米国では、DC事業者が自ら電源を確保したり、大規模電源の隣接地にDCを建設する動きがある。必要な供給力を確保できるまでガスタービン発電などオンサイト電源を稼働してDCの早期稼働を目指すケースもあるが、地域住民からは排ガスなどの環境面の懸念が指摘されている。

 DC事業者が、安定した脱炭素電源である原子力発電をPPAで確保する動きもある。マイクロソフトはコンステレーション・エナジーとスリーマイル島原発1号機を再稼働させ20年間の電力供給を受ける契約を締結している。

 米国では大規模DCの建設において、地域住民から、大気汚染やDCの冷却に用いる地下水の減少などの環境面の影響や、系統増強費用などが一般需要家に転嫁されるのではないかといった懸念が示されている。

 ◆系統接続ルールの適正化

 我が国においても、急増する系統接続申請の課題に対し接続ルールの変更が開始されつつあるが、海外事例から今後参考となり得るルールや技術的対応を概説したい。

 系統接続が先着優先のルールのもとではDC事業者が早期の系統アクセスの権利を求めて、DCの実現性に関し十分な検討がなされないまま系統接続申請がなされる懸念がある。これらも含め、すべての申請を真の需要として対応すると、過剰な設備投資となり得る。

 米国や英国では接続申請時に高額の保証金を徴収し、建設予定地の所有権などの確保を義務付けるなど、接続申請への対応を「申請の早い者から」から「準備ができた者から(First Ready First Served)」に移行したり、手続きの進行中でもマイルストーンを達成できない計画を強制的に解約する動きがある。

 系統混雑時などの調整力提供を前提に優先的な接続枠を与えたり、ノンファーム接続や高速しゃ断器と大容量蓄電池などの組み合わせによるN―1電制を需要側にも適用することは、DCの早期稼働を促す有効な手段となり得る。

 一方、調整力確保のためにオンサイト発電機を常時稼働することは環境規制との整合や地域住民の受容性が課題となる。また、系統混雑時などの対策として、どのDCからどの程度負荷を抑制するかという優先順位や免責規定に関する法的整理なども必要となろう。

 FERC(米国連邦エネルギー規制委員会)は26年6月、PJMやCAISOなど管轄下の6つの系統運用者に対し、自身の系統接続ルールにおいて、DCの系統接続に要する増強費用(これをどのように特定するかも課題であるが)を一般需要家に転嫁しない方策となっていることを60日以内に証明することを命じた。

 プロジェクトが計画どおり進まない場合や、DCの稼働率が高まらない場合の最低料金制は、設備増強費用の座礁化を避けるために用いられている。

 ◆需要・潮流予測の困難化

 大規模DCのワークロード処理や、DC事業者によるオンサイト電源などの運用の結果、系統需要が乱高下する懸念がある。ワット・ビット連携はグリッド運用の安定化への寄与が期待される一方で、系統運用者がDC内の電力需要に係るこれらの運用の動きが見えないと、系統需要の予測が困難化し、LFC(周波数制御)運用や必要予備力の確保といった実運用の困難化が懸念される。アイルランドでは、大規模DCに自ら電源保有を求め、保有電源を卸電力市場に参加させるなど、系統運用者から見える形にする動きがある。

 我が国は需給バランスを30分単位の電力量で管理しているが、大規模DCはビット情報の移動で数十万キロワット級の負荷が瞬時に変化し、国家間や広域エリア間で移動し得るという、これまでの大規模負荷にない特徴を有する。

 DCの運用方法はDC運用者の機微情報と思われる一方、DCの運用による予期せぬワークロードシフトは地域間連系線などに予期せぬ潮流変化をもたらすため、DCの需要状況の変化やシフト計画をリアルタイムも含めて系統運用者と共有する、広域的な仕組みが構築できるかが課題となる。

 ◆急峻な負荷変動と電力品質問題

 DCは大規模な電力負荷が比較的安定して予測可能であるという従来の前提に挑戦している。大規模なAI学習の開始・終了時やバッチ処理の切替え時に、DCにおける数千台のGPUが同時に状態遷移することで、数十万キロワット級の矩形波状の短周期の負荷変動が生じる。これにより、系統周波数やフリッカ現象のような系統電圧の乱れが懸念される。

 またDC内部の膨大なインバーターや電源回路から発生する高調波による周辺の一般需要家や精密機械への波及も防ぐ必要がある。このため系統側対策に加え、DC事業者にもグリッドコードで一定の電力品質を維持する設備の設置の義務付けが必要と思われる。

 1拠点で数十万キロワット、海外では100万キロワット級のDCの建設も相次ぐ。生成AI用DCには非常に高価な高性能半導体が大量に搭載されており、系統電圧などの変動時に、DC事業者は速やかにDCを電力系統から切り離し、高価な半導体を守りたいとのインセンティブが働く。

 一方、系統事故による電圧変動などにより大規模DC負荷(複数のDCの場合もあり得る)が瞬時に系統離脱すると、周波数上昇や電圧変動が生じる。周波数や電圧の調整機能で吸収しきれない場合、保護装置の動作により電源などが連鎖的に脱落し、最悪の場合、大規模停電につながる懸念がある。