データを活用して新たな価値を見つけ出そうという試みが、電力をはじめとする様々な業界で本格化してきた。技術の進化によって、膨大なデータを収集・分析するハードルは下がった。サービスの差別化やビジネスモデルの転換に生かせるかが、企業の将来を占う試金石となる。「データセントリックな社会」の実現へと大きく近づく中、企業の変革を後押しする「アドバイザー」の役目を担うのがインテルだ。昨年11月に就任した鈴木国正社長と、張磊執行役員・インダストリー事業本部長のインタビューを中心に、最近の取り組みをまとめた。
 


 

◆他業界の事例/スマート物流を推進


輸送中貨物のリアルタイム監視

 採算性の悪化や労働力不足に悩む物流業界。人工知能(AI)とIoT(モノのインターネット)の融合によって、その課題を解決しようという画期的な取り組みが、日本で始まった。
 インテルは今年3月、物流業界向けのIoTソリューションとして、サプライチェーンにおける荷物の輸送状況をリアルタイムで分析・可視化する「インテル・コネクテッド・ロジスティクス・プラットフォーム(インテルCLP)」を日本市場向けに本格展開すると発表した。
 医療品や精密機械は、輸送時にも厳格な品質管理が求められる。輸送中に盗難や破損が発生した場合、トラブルのあった場所や原因の究明、代替品の輸送などにコストと時間がかかっていた。
 貨物に取り付けたセンサータグ(子機)が、温度、湿度、衝撃、傾斜、照度などのデータを計測する。データはインターネット経由でクラウドに送られ、フォワーダーと荷主の双方が輸送状況をリアルタイムに把握できる。
 例えば輸送中に貨物が開けられて照度が上昇するなど、データが異常値を示すと警報が鳴る仕組みだ。トラックや輸送経路にはゲートウェイ(親機)が設置されており、貨物が通過すると位置情報が送信されるため、トラブルが発生した場所も分かる。
 インテルは、日本通運が開発した輸送状況可視化サービス「Global Cargo Watcher Advance」向けにインテルCLPを提供。同サービスは今年2月から提供が開始された。
 インテルは、今後も様々なパートナー企業との協業を通じてインテルCLPを活用したソリューションの開発を行い、物流業界におけるデジタル・トランスフォーメーションを支援する。
 


 

◆他業界の事例/賢い自販機で売り上げ増


インテリジェント自販機・システム概要図

 売れ筋商品から災害ニュースまで様々な情報を発信できる自動販売機が、イオンモールに設置されている。デジタルサイネージ(電子看板)機能を搭載。購入者の年代や性別をカメラで見分け、お勧め商品を表示する。子どもの姿を捉えるとアニメのキャラクターを映し出して気を引くなど、「インテリジェント(賢い)自販機」の名にふさわしい多機能ぶり。それを可能にしているのがインテルの技術だ。
 インテリジェント自販機は2013年末から、国内最大級の「イオンモール幕張新都心」開店に合わせて量産機が投入され、一気に普及した。
 前面に組み込まれた大型液晶ディスプレイでは、集客を目的とするこのようなユニークな仕掛けを施しているほか、インターネットを経由して広告や災害時の緊急情報なども配信できる。自販機の多い日本ならではのサービスだ。
 商品の購入には「WAONポイント」を使うことができ、会員の利便性向上に役立っている。イオンモールで利用できるクーポン券の発行も可能だ。商品の効果的な販売と広告収入により、1台当たりの売り上げは、通常の自販機に比べて1.2~2倍にも拡大したという。
 この自販機の機能性の高さを支えているのは、インテルvProテクノロジー。パソコンにも搭載されている技術で、電源の入切や再起動をリモートで制御できることが大きな特徴の一つだ。これによって、人手に頼っていたメンテナンス費用の削減と、システム障害による販売停止の回避を実現した。
 この小さな半導体製品は、デジタルサイネージの画像処理や自販機の前に立った人の属性認識も担っている。広告の視認者や商品購入者のデータを収集し、マーケティングにも生かしている。

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