日本では対立的に語られることも多い原子力発電と再生可能エネルギー。米国では「脱炭素化」の旗印のもと、原子力に否定的だった団体も推進団体も同様に、原子力と再生可能エネの共存を主張する傾向がみられるようになった。

 その背景には、「原子力を代替できる脱炭素化技術が早急には育たない」という共通認識がある。状況を調査した三菱総合研究所は「共存が現実的な選択肢として議論されるようになった」と指摘している。

 昨年11月の報告書で「再生可能エネへの投資促進と同時に、連邦政府や州政府による既設原子力への財政支援も必要だ」と訴えたのは、原子力否定派として知られていた科学者団体「憂慮する科学者同盟(UCS)」だ。

 米国では現在98基の商用炉が運転中で、発電電力量に占める割合は約2割(2017年時点)。だが、ガス価格の下落などを受けて採算が悪化し、早期閉鎖を決める電力会社も現れてきた。

 UCSは、「原子力に代わる低炭素技術なしには、電力会社はガスや石炭火力に頼る可能性があり、温室効果ガスの排出を増やす」と指摘。再生可能エネ技術は急には育たず、原子力との共存が必要になるという考えを示した。「従来の主張から転換し、大きな話題になった」(三菱総研)という。

 一方で、原子力推進系組織として知られる米クリア・パス、気候エネルギーソリューションセンター(C2ES)、米資本形成委員会(ACCF)など5団体は2月中旬に提言を発表し、脱炭素化には風力や太陽光の出力変動性をフォローできる原子力の活用も欠かせないと指摘した。より安全性を高めた次世代原子力の利用も提唱。完璧なエネルギー源はなく、特定のエネルギー技術を支持したり、差別しないことが重要だという認識も示した。

 米国の著名な団体ではシエラクラブなどが原子力に否定的な姿勢を保っている。ただ、脱炭素化という目標に向かい、推進か反対かという従来のスタンスを超えて意見が合致するケースが現れてきたことは大きな変化といえそうだ。

電気新聞2019年3月15日