○進む機器・設備のデジタル化/最新の制御盤を導入

関西電力では、新規制基準で定められた項目以外にも自主的な安全性向上対策を行っている。発電所の「頭脳」といわれ、発電所全体を24時間監視する中央制御室ではレバーやスイッチ、アナログ計器類で構成された制御盤を大画面モニターやタッチパネルなどを採用したデジタル式に交換した。高浜発電所の棚橋晶所長は「操作性はもちろん、視認性や設備の信頼性、メンテナンス性などが向上しました」と効果を説明した。西川さんは、「映画で見た古い原子力発電所の中央制御室が記憶に残っていたので、イメージとかなり違いました。大画面モニターで、運転員全員で情報共有できれば、効率的な運用にもつながりますね」と感想を述べた。
○視察を終えて
西川さん 正しい情報を知って、正しく恐れることが大事/棚橋所長 発信の大切さ再認識

視察を終えた西川さんは初めて訪れた原子力発電所の印象を語るとともに、日本のエネルギーのあり方や原子力の安全対策などについて棚橋所長と意見交換した。
西川さんは「電気は身近なものですが、発電所を訪れてみると、どうやって生み出されて届けられているか、知っているようで知らないことも多かった。大人になってからも学び直すことが重要だと感じました」と振り返った。「SNSなどインターネット上の情報がどこまで正しいのか。実際に現場を見ると認識が変わるきっかけになると思いますし、違った印象を持つのではないでしょうか」とも指摘した。
棚橋所長は「西川さんとお話しして、情報発信の大切さを再認識しました。発電所では地元住民への説明会や地元の小中学生を対象とした見学会の開催などを行っていますが、こうしたことを継続して取り組んでいくことが大事だと感じました」との認識を示した。
これに対し、西川さんは地元の滋賀県で主催するロックフェスを例に挙げ、「大きな音を出すイベントなので地元の方の理解が必要です。このため、小学生に体験学習として開催前に会場に来てもらい、中継機材や照明などにふれてもらっています。子どもたちが自宅に戻って家族にその日の出来事を話すことで、話題となり理解が広がっています」と取り組みを紹介。「50年の歴史がある高浜発電所ですから、地元の方の理解は浸透していると思いますが、『百聞は一見に如かず』なので、できれば多くの方に現場を見てほしいですね」と話した。
安全対策については、「福島第一原子力発電所事故を経験し、新たな知見や技術を取り入れ、安全対策を強化している。情報をアップデートすることが必要だと感じました」と指摘。「原子力発電は膨大なエネルギーを生むことの裏返しとして危険性もあり、どのように扱っているかを知ったうえで正しく恐れることが大事だと思います」と私見を述べた。

棚橋所長は「ありとあらゆる安全対策を実施していますが、現状に甘んじず、改善を繰り返し、さらなる高みを目指し挑戦していかなければならないと心がけています」と気を引き締めた。
今後、AI(人工知能)の普及やデータセンターの拡大により、電力需要は増加すると見込まれている。西川さんは「再生可能エネルギーも大切ですが、原子力は二酸化炭素(CO2)排出量の削減に加えて、安定供給の確保にも貢献します。それぞれの特徴を生かすためにも、最適に組み合わせて供給していくことが必要だと思います」との考えを示した。
棚橋所長は「発電所としては『当たり前を守る』という気持ちで、今後も原子力による安価な電気を福井県から安全にお届けし続け、お客さまの期待に応えていきたいと考えています」と述べた。
最後に西川さんは「皆さんの日々の努力や研さんが私たちの生活を支えてくれています。発電所で働く皆さんにお礼を言いたいですし、皆さんの努力を一人でも多くお伝えできればと思っています」とエールを送った。
○西川 貴教さん(にしかわ・たかのり)

1970年生まれ。滋賀県出身。96年5月、ソロプロジェクト「T.M.Revolution」としてシングル「独裁 ―monopolze―」でデビュー。2017年からは西川貴教名義での音楽活動を本格的に開始。ほかに、俳優、声優、地上波TV番組MCなど多岐にわたり活躍。08年に滋賀県から「滋賀ふるさと観光大使」に任命、09年より県初の大型野外音楽イベント「イナズマロック フェス」を主催。25年滋賀県で開催される国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」PR大使に就任。
○関西電力高浜発電所 PWR339.2万キロワット(福井県高浜町)/関西エリア需要の約2割相当発電
高浜発電所は1~4号機で構成されており、1号機は1974年11月に運転を開始、2024年に運転開始から50年を迎えた。2号機も今年11月に運転開始から50年を迎える。1、2号機の出力は各82万6000キロワット、3、4号機は各87万キロワットで、合計339万2000キロワットと現在運転中の原子力発電所では国内最大出力で、同発電所で作られた電気は、定格出力時には関西エリア需要の約20%に相当する電力を賄うことができる。東日本大震災以降、新規制基準に対応するための様々な安全性向上対策を行い、3号機が16年2月、4号機が17年5月、1号機が23年8月、2号機が同年9月に再稼働した。