経済産業省は21日、二酸化炭素回収・貯留(CCS)事業法に基づき、北海道苫小牧市沖を特定区域に指定したと発表した。試掘の許可申請の受け付けを同日開始し、5月21日まで3カ月間募集する。特定区域の指定は初めて。経産省は試掘者を選定して許可を出し、年内にも試掘を始めてほしい考えだ。

 苫小牧地域では石油資源開発(JAPEX)と出光興産、北海道電力の3社グループが、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の先進的CCS事業を受託して事業性評価や設計作業などを行っている。3社は現時点で年間二酸化炭素(CO2)貯留量を約150万~200万トンと試算する。

 特定区域制度に選ばれた事業者による試掘により、年間貯留量や累積貯留量を精緻に分析する。データの取得により事業の経済性も詳細に分かる。CO2を埋めて地層に切れ目が発生するかなど安全面の情報も追加で取得できる。

 苫小牧市沖の約96平方キロメートルを特定区域に指定した。苫小牧市では日本初の大規模CCS実証が行われた実績があり、CCSへの地元理解が進んでいることが特定区域に早期に選ばれた背景にある。苫小牧市のほかに、日本海側東北地方と首都圏、九州西部沖の3地域でも特定地域の指定に向けて準備が進んでいる。

 CCS事業に向けた試掘許可の取得を巡り、鉱業法に基づく石油や天然ガスの採掘権者は、鉱区で試掘の許可を経産相に申請できる。枯渇ガス田に貯留する事業が該当し、特定区域の選定や事業者公募といった過程が不要になる。鉱区での事業展開を目指すのがJAPEXや東北電力などのグループで、東新潟地域で検討を進める。

 経産省・資源エネルギー庁は2030年までに年間貯留量600万~1200万トンの確保にめどをつけることを目指す。2月には、CCS事業の支援措置に関する詳細設計に有識者会合で着手した。21日の閣議後会見で武藤容治経産相は「水素を活用した非化石転換による脱炭素化が難しい分野において、50年のカーボンニュートラルに不可欠な手段」とCCSの意義を強調した。その上で「コストを抑えていくのは大きな課題」と指摘し、技術開発や支援制度の検討を進めるとした。

電気新聞2025年2月25日