図_5Gで期待されるサービス_4c
 
 5Gの導入スケジュールは、2019年中のサービス開始、20年の本格運用が想定される。5Gが実現する新サービスとしては、超高速(eMBB)を活用した4K/8K画像の伝送、多数同時接続(mMTC)を利用したIoTのさらなる発展、超低遅延(URLLC)を活用したロボット、ドローンなどの遠隔操作、自動運転への活用などが想定される。さらには過疎化、労働力不足に対応した遠隔監視、遠隔医療等の応用も期待されている。実際、どのような世界がもたらされるのであろうか。
 

超高速、多数同時、超低遅延で実現できること

 
 5Gで最も特徴的なのは、超高速なサービスだ、4K/8Kテレビの超高速伝送を人口密集地でも実現できることが確認されている。東京オリンピック、パラリンピックの会場での応用も想定されているので、大会の試合を、素晴らしい臨場感で楽しむことが期待できそうだ。

 多数同時接続を活用すれば、IoT(モノのインターネット)のさらなる発展が期待される。在庫管理を行う無線タグ、各種スマートメーター、オフィス内の多数のセンサー、カメラなど、あらゆる“もの”が無線でつながる。これにより、スマート倉庫、スマートオフィスなどのサービスがさらに発展していくと考えられる。

 さらに、超低遅延により高いリアルタイム性や信頼性の要求されるミッションクリティカルサービスを、サポート/アシストすることができると想定されている。これは今話題の自動運転への応用がまず思い浮かぶだろう。
 

乗用車だけでなく、ドローンや工事車両も自動運転可能に

 
 まず5Gを使って行われるのは、通信外部環境情報の取得と思われる。例えば周囲の状況を示すダイナミックマップや、周りの車や社外にあるセンサーからの情報を取得することにより、自車に設置されたセンサーでは得られない情報を得て、より安全でスムーズに走行することが可能になる。将来、5G通信の信頼性が証明された後には、自動運転のフィードバック制御を5G経由で行うことも可能になるかもれない。ただ、これには十分な安全性の議論が必要であろう。

 さらにロボットや無人の土木や工事の車両、ドローンなどの遠隔操作も5Gを使うことで容易になる。また監視カメラを5Gに接続したり、警備員に5Gに接続したウエアラブルカメラを持たせたりすることにより、遠隔監視や広域監視が容易に実現できる。これらは労働力不足対策として大いに期待したい。
 

遠隔医療やスマートグリッドも実現

 
 医療分野では、山間部にある診療所と街中の病院を結び、テレビ会議、接写カメラ、各種診断装置を5Gで接続すれば、遠隔診療を実現できる。過疎化の進む地域に応用が可能であろう。

 エネルギー分野でも、各種設備の遠隔監視やスマートメーターの高度化に5Gは大活躍すると思われる。また、家電をはじめとした電力需要機器のIoT化がさらに進むことにより、スマートグリッドに代表される電力網がさらに進化するだろう。
 

スマホすらなくなる? ソサエティー5.0の世界とは

 
 この超高速、多数同時接続、超低遅延の5Gネットワークが本格的に普及した先の世界は、どのようになるのであろうか。

 街中はIoT機器であふれ、全てのものが5G経由で、高度にAI化されたクラウドサービスに接続される。IoT機器からの膨大な情報がサイバー空間に集積される。通信が超高速になるので、スマートフォンのような小さな端末でなく、街中の看板やディスプレーを表示端末として使い、端末はその前にいるユーザーを顔認証など生体認証により識別して、ユーザー個別のデータやサービスに接続してくれるようになるのではないだろうか。そうなれば最終的には、誰もスマホを持ち歩かなくなるだろう。

 ロボットや自動走行車などの技術は、5Gでさらに発展し、「普通」になる。これは少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題の克服に大いに貢献する。そしてこれこそがソサエティー5.0の社会の実現そのものである。

 全世界での5Gインフラへの投資は、基地局やネットワーク機器、データセンターなどに及び、総額は30兆円とも60兆円ともいわれる。2019年から投資は本格化し、いよいよ5Gの時代を迎えることになる。

【用語解説】
◆スマートオフィス
ICTを最大限に使い、創造的な仕事や開発、研究等を、自由に楽しく、かつ効率的にできるオフィス。

◆ドローン
無人の飛行装置。無線による遠隔操縦、あるいは設定されたパターンで自律飛行をする。人の行けないところでの撮影や、物資輸送に活用される。ドローンとは,ハチの羽音、もしくは雄蜂をいい、そこからアメリカ軍が、この名を使うようになった。

◆スマートメーター
検針業務の自動化や電気使用状況の見える化を可能にする電力量計。

◆スマートグリッド
電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網。制御のための機器が、送電網の一部に組み込まれている。

電気新聞2018年12月17日