◇国際標準狙う
――発電設備・システムの標準化で有志国と協力する方針だ。
「どんなに優れた技術を開発しても、国際的な認証機関に認めてもらわなければグローバル市場で通用しない。自画自賛のガラパゴス化した技術では、ビジネスにならない。『国際標準』を取るために有志国との連携は不可欠。FLOWRA内に設けたワーキンググループには、国際認証機関をメンバーに加え技術開発を進める」
――浮体式の送電には、海中に浮遊する「ダイナミックケーブル」の開発も必須だ。
「水深50~60メートル程度の浅い海域で、海底に支柱を立て風車を設置する着床式の洋上風力では、送電ケーブルを支柱から海底にはわせて敷設できるが、浮体式洋上風力ではそうはいかない。FLOWRAは水深500メートル以上の深い海域でも開発可能な浮体式洋上風力を目指しており、浮体構造物からダイナミックケーブルを数百メートルにわたって浮遊させ、海底の敷設ケーブルにつなぐ必要がある」
「課題は、ダイナミックケーブルに付着する海藻類などの海洋生物。付着物の重さでケーブルが沈んで着底し、海底の岩場ですれて損傷すると漏電の恐れが出てくる。日本には住友電気工業、古河電気工業といった世界に誇るケーブルメーカーがあり、大水深で利用可能なケーブル開発などに取り組みたい」
――地方の活性化に対する思いが強い。
「浮体式の技術開発競争に欠かせない造船業は、中国、四国地方の瀬戸内海沿岸、九州に集中している。産業の裾野が広い造船業が盛んになれば、それを支える中小企業にも活力をもたらし、各地に新たな雇用を生み出せる。日本のものづくりの底上げにつながり、国全体の産業競争力に結び付いていく」
てらざき・まさかつ=1982年九州電力入社。社長室副室長(経営政策担当)、九電ビジネスフロント代表取締役社長、九電みらいエナジー常務取締役・事業企画本部長を経て、2023年NTTアノードエナジー執行役員・グリーン発電本部長。福岡市出身、65歳。
電気新聞2024年9月24日
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