ゲームチェンジを起こす新たな発電方式として、各国は、浮体式洋上風力発電の技術開発競争に火花を散らす。国内では、大手電力など発電事業者20社でつくる「浮体式洋上風力技術研究組合」(FLOWRA)が3月に誕生し、2030年度の実用化に挑む。発電設備を低コストに量産化できる技術を世界に先駆けて確立し、「アジア・太平洋の広大な海域がマーケットとなる大きなビジネスチャンスをものにしたい」と、FLOWRAの寺崎正勝理事長。国内産業の振興にどうつながるか、克服すべき技術的課題と合わせて聞いた。
――FLOWRAには、米国が技術開発のカウンターパートとして秋波を送る。
「3月に設立を発表したところ、海外の反響が大きく、すぐに米国大使館から『どういう組織か話を聞きたい』と担当参事官が訪ねてきた。35年までに浮体式洋上風力を1500万キロワットに拡大する目標を掲げる米国は、日本のどの組織と連携したらいいか模索していたのだろう。4月の日米首脳共同声明で『日本が立ち上げたFLOWRAを米国は歓迎する』という表明につながり、米側の期待の大きさを感じている。英国やデンマーク、ノルウェー、オランダの大使館からも訪問を受けた」
◇量産への期待
――欧米各国の期待が高い理由は。
「浮体式洋上風力は、海岸から遠く離れた沖合の深い海で、船のように浮かべた鉄製の浮体構造物に風車を載せて発電する。大きさが70~80メートル四方の浮体構造物を量産化するに当たって、造船や鉄鋼、金属加工を得意とする日本と連携したいということ。実用化の成否を握る、いくつかある技術の中でも、浮体構造物の量産化技術を確立できるかが大きく左右する。設備コスト全体の4分の1を占める浮体構造物の生産で世界をリードし、日本のものづくり産業をさらに伸ばしたい」
――日本の弱みは。
「浮体式洋上風力を実際に設置するとなると、欧米に比べ経験に乏しい。欧米メジャーは海底油田・ガス田開発で、何十年も浮体式生産設備を設置してきた経験がある。ただ、この浮体式生産設備を海底地盤とつなぐ係留チェーンは日本製であることが少なくない。素材の供給面で、日本企業は優れた技術を持つ。欧米の有志国と連携して互いの強み、弱みを補完し、実用化をいち早く成し遂げたい」
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