イーレックスは先々の電力を固定価格で取引する電力先物を駆使する。電力先物は現物の電気を受け渡すのではなく、決済日が来るとJEPXのスポット価格を参照して差額を決済する。電力先物で売買価格を固定すれば思わぬ損失を回避できる可能性があり、新電力にとっては有力なリスクヘッジ手段だ。
イーレックスグループは電力先物を応用し、年間のほか、市場価格が高くなりやすい夏と冬といった特定の期間の電気料金を固定する法人向けプランを訴求する。「お客さまからのリクエストがあった。年度の予算を固めたいお客さまからは、年間で価格を固定するプランが人気だ」。イーレックスの河村廉執行役員は手応えを示す。
同社は東京商品取引所(東商取)、日本でクリアリング(決済保証)事業を展開する欧州エネルギー取引所(EEX)グループの両方を電力先物取引で使う。株式市場のように価格情報が分かる東商取、売り手と買い手をマッチングさせるEEX。それぞれに活用のメリットがあると河村氏は指摘する。
直接電力先物を使わずとも、ブローカーや商社を経由し電力先物と同様の効果がある電力取引に乗り出す新電力も増えてきた。河村氏は「他の商材と合わせて副次的に電力を売る事業者であれば、無理に電力先物を使う必要はない」と話す。一方で「先物を使って事業者として独立性を持った方が、多様化する需要家のニーズに応えやすくなる」との見方を示す。
一時期は大手電力ですら次々と高圧以上の新規受け付けを停止に追い込まれ、契約先を失った企業が一般送配電事業者の最終保障供給に流れ込んだ。今は大手電力が標準メニューの受け付けを再開し、企業が「電力難民」になるリスクはほぼなくなった。
法人向け市場連動型プランの中には違約金を取らず、市場価格がスパイクした際に手軽に離脱できるとするものもある。だが、それは一時的に契約を失っても、大手電力が受け入れてくれるという前提がなければ成り立たない話だ。大手電力関係者は「正しい競争の姿なのか」と首をかしげる。
自社の電力の使い方だけでなく、価格変動のリスクをどこまで許容できるか。そして、選んだ小売電気事業者が責任を持って電力を供給し続けてくれるか――。契約先を選ぶ上で、需要家が見極めるべきポイントは増えているといえそうだ。
電気新聞2024年9月9日
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