電気バス試作車に搭載した東芝製の次世代リチウムイオン電池

 東芝はブラジル時間19日、ニオブチタン酸化物(NTO)を負極に用いたリチウムイオン電池=写真=を搭載した電気バスの走行実験を現地で始めた。NTOは一般的な負極材の黒鉛と比べ、理論上のエネルギー密度を2倍に高められる。約10分の超急速充電が可能で寿命も10年以上と長く、頻繁に充電する商用車に適している。東芝は2025年に次世代リチウムイオン電池として製品化を目指す。

 ブラジルのニオブ生産会社、CBMMが権益を持つアラシャ鉱山(ミナスジェライス州)で実証を始めた。電気バスにCBMMの従業員を乗せて走らせる。車両の運行データを収集し、商業化の検討に生かす。CBMMには双日が出資している。東芝を含めた3社で製品化や販売活動を推進していく。

 NTOを負極に用いたリチウムイオン電池を搭載した電気自動車(EV)の走行は世界初。電気バスはフォルクスワーゲン・トラック・アンド・バスが開発した。

 NTOは電池のエネルギー密度を向上させる。マイナス30度の低温でも性能が落ちない特徴がある。ニオブは金属元素の一つで、自動車向け鋼材の軽量化や剛性化に不可欠とされる。CBMMは世界一のニオブ生産量と販売量を誇る。

 東芝と双日、CBMMの3社は18年にリチウムイオン電池負極材の共同開発契約を締結し、NTOを用いて試作セルを開発した。21年に商業化に向けた契約を結び、商用EVへの応用を念頭に量産体制を検討してきた。23年には共同販売契約を締結し、サプライチェーン(供給網)構築や営業活動を進めた。24年にはブラジルと日本の両国政府が立ち会いながら事業化の推進で合意した。

電気新聞2024年6月20日