電力先物の活用の重要性を強調するイーレックスの安永常務

 東京大学経済学部の講座で、東京商品取引所(東商取)が講師派遣で協力する「産業事情『エネルギー市場/コモディティ市場』」が4月に開講した。同講座は市場の機能や役割を普及・啓発するとともに、将来の人材育成につなげる狙いがある。東商取による講師派遣は2年連続。4月下旬にはイーレックスの安永崇伸常務取締役らが講師となり、利用者の視点から先物市場の重要性を訴えた。

 2024年度上期の全13コマを使い、市場制度や燃料トレーディングの基礎を現場第一線の実務者が教える。対象は学部3、4年生で、昨年度から100人以上多い348人が履修する見込み。東商取の石崎隆社長が、東大の大橋弘副学長に講座設置を持ち掛け実現した。講座は今年度で区切りを付ける。

 初回は石崎社長が講師を担当した。コモディティー市場の特徴である価格変動リスクの移転・引き受けの仕組みや価格発見機能を解説。世界の取引所の現状も概観した。

 3回目の講義でイーレックスの安永常務は、新電力のみならず、大手電力にとっても、電力取引に「リスク管理は必須の時代だ」と指摘。投機的なイメージを払拭し、積極的に活用していく必要性を呼び掛けた。河村廉執行役員・エネルギー市場部長は全面自由化後の不確実性の高まりに触れつつ、実務的な観点からリスク管理の手法を伝えた。

 受講生からは「販売する電力のうち、どのくらいを先物でヘッジするのが適当か」「太陽光や風力の活用は今後も広がっていく。電力市場がさらに不安定化しないか」など活発な質疑が飛び交った。

電気新聞2024年5月8日