洋上ウインドファームのイメージ
洋上ウインドファームのイメージ

 風力、太陽光発電など再生可能エネルギーが注目されている。世界の風力発電は、10年前の5倍以上の53万9000キロワット(2017年)に急伸している。日本も2030年には現在の約3倍の10万キロワットを目標にしており、洋上風力の伸長が期待されている。風力発電普及の鍵は、LCoE
の低減と電力系統との安定した接続にある。日立製作所は、これらの課題に対してデジタル技術を活用した、「再生可能エネルギーソリューション」に取り組んでいる。

 風力発電は季節、天候、地形などにより、複雑に変化する風況によって発電量が変動する。その特性を踏まえつつ、(1)LCoEの低減、(2)電力系統との安定した接続を実現すること(コネクト&マネージ)が普及拡大の決め手である。日立が提供する「再生可能エネルギーソリューション」はLumada
を活用して、これらのテーマに応えている。
図_再生可能エネルギーの主力電源化_4c

 

風のパターンを学習し、最適運転を支援

 
 「LCoEの低減」では、風力発電機の風速計などのセンサーデータから風速・風況のパターンを学習し、風の状態に応じた制御パラメーターを割り出して最適運転を支援することで発電量を向上させ発電コストの低減を実現する。さらに、SCADAデータを活用した予兆診断技術により機器の疲労度や余寿命を解析・推定できるので、無理な運転を避けつつ安定して発電を行うことができる。

 複数の風力発電設備が並ぶウインドファームでは、過去の運転データを基に、風車の後流(ウェイク)の影響で発電量を落としている風車を特定し、風上側の風車を制御することでウェイクを抑えて全体の発電量を高めることも可能だ。これらの機能は、複雑な地形により風況の変動が大きい日本の風力発電サイトでいっそう威力を発揮する。

 風力発電の安定稼働のためには、長期停止につながる故障の未然防止が重要である。例えば、重要なコンポーネントである発電機は風況の変化に応じて絶えず運転、停止を繰り返す厳しい状況に置かれる。

 「再生可能エネルギーソリューション」では、SCADAの統計情報(ログデータ)の解析と日立が培ってきた機器に関する知見を生かし、これまで把握が困難だった発電機の軸受異常を早期に検出する「風力発電向け予兆診断」サービスを提供している。これにより、突発的な発電停止を防ぐだけでなく、運転を継続しつつ必要な部品、作業員を先行手配することで、効率的に交換修理が行える。日立の試算では、突発停止による60日間の風車停止期間を5日間に短縮し、稼働率の向上、保守作業の省力・省コスト化に貢献できる。
 

太陽光とのハイブリッドや、系統状況に応じた最適制御により安定した電力供給を実現

 
 「コネクト&マネージ」への貢献として、接続可能量を有効活用するために太陽光発電と風力発電を組み合わせたハイブリッドシステムや、系統の状態に応じた風車の運転最適制御により、再生可能エネルギーによる安定した電力供給を実現する。また、今後、分散型の電源である風力、太陽光発電の増加によりエネルギーの地産地消のニーズが高まってくることが予想される。

 日立はこれまで参画してきた実証事業の成果も踏まえ、最適なエネルギーマネジメントを提供するなど、日立のデジタル技術を活用したソリューションで再生可能エネルギー導入拡大に貢献していく。

【用語解説】
LCoE:Levelized Cost of Electricity
均等化発電原価。発電所の建設費や運転維持費・燃料費など発電に必要なコストと利潤などを合計して運転期間中の想定発電量を基にキロワット時当たりのコストを試算する指標。

Lumada 
お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称。

SCADA:Supervisory Control And Data Acquisition
風力発電設備の運転情報や、設備に取り付けられたセンサー情報を監視し、また、遠隔から運転制御を実施する。

電気新聞2018年10月22日