AP1000を採用した山東省の海陽原子力発電所(海外電力調査会提供)
AP1000を採用した山東省の海陽原子力発電所(海外電力調査会提供)

 中国で米ウエスチングハウス(WH)製の第3世代原子炉「AP1000」が相次ぎ営業運転に入っている。9月21日の浙江省の三門1号機(125万キロワット)をはじめ、10月22日に山東省の海陽1号機(同)、11月5日には三門2号機(同)がそれぞれ運転を始めた。早ければ年内にも海陽2号機(同)が運開し、4基体制になる。ただ、再生可能エネルギーの普及拡大などを背景に、国内の発電設備は余り気味だ。このため、有識者からは国内で新型炉を含む新設の停滞感が増す一方、海外輸出に拍車がかかるという見方が出ている。

 新品のプラントがそびえる三門、海陽の両サイト。9月に海陽サイト、11月に三門サイトを訪れた海外電力調査会北京事務所長の真田晃氏は「現場には若い作業員も多く、非常に活気があった」と振り返る。中国は9月21日の三門1号機の運開で原子炉の基数、設備容量ともに日本を抜き、世界3位となった。11月22日時点で42基・約4160万キロワットが運転中だ。プラントの建設や工程管理技術は、もはや「日本にひけをとらない」と真田氏はみる。

 ただ、各サイトの隣接地に視線を移せば、活況の「裏側」が垣間見える。三門1、2号機の隣では同じAP1000の3、4号機が、海陽1、2号機の隣でも同型の3、4号機がそれぞれ準備工事を控えているが、「なかなか国の許可が下りない」(真田氏)という。

 中国では、昨年から第3世代炉を含む原子炉の新規着工がゼロの状態が続く。建設許可は13年以降、下りた例がない。それ以前に許可を得て建設中の原子炉が17基・約1600万キロワットあるが、その後が尻すぼみの状態だ。

 中国政府は20年に運転中の原子炉を5800万キロワット、建設中の原子炉を3千万キロワットに拡大する計画だ。前者の計画は建設中の原子炉が全て運開すればほぼ達成できるが、後者の計画はストックの枯渇により、未達が確実視されている。

 新規着工が停滞している背景として、真田氏は(1)再生可能エネ電源の普及が想定以上に伸びていること(2)安全対策の強化に伴う発電コストの増加を政府当局がシビアにみるようになったこと――などを挙げる。原子炉の設備生産能力には余裕があるため、海外への輸出攻勢をさらに強める可能性があるとしている。

電気新聞2018年11月29日