シンガポール中心部にオフィスを構えるJERAトレーディング。入り口にはJERAとEDFの文字が並ぶ
シンガポール中心部にオフィスを構えるJERAトレーディング。入り口にはJERAとEDFの文字が並ぶ

 東京電力フュエル&パワー(F&P)と中部電力の合弁会社JERAは、石炭のトレーディング事業について調達・販売の両面で多角化を進めている。シンガポールに拠点を置く子会社に、フランス電力(EDF)子会社のEDFトレーディングの石炭取引事業を統合。これにより、北米やコロンビアの石炭を扱う機会が拡大したほか、親会社以外への外部販売でもアジア向けで実績が出てきた。IPP(独立系発電事業者)向けのサプライヤーとしても、じわりと存在感を発揮しつつある。

 JERAの石炭取引を担うのは、シンガポールに本社を置く子会社のJERAトレーディングだ。

 2017年4月にEDFトレーディングの石炭取引事業を統合した。現在は本社の65人を中心として、米国、英国の拠点に計20人程度が所属している。この他にも、事業統合で取得したオランダ・アムステルダムの石炭ターミナルで約120人が働く。

 EDFとの事業統合から1年半余りの中で、事業領域を徐々に拡大している。成果の一つが調達先の多様化だ。東電F&Pと中部電力が自社発電所向けに扱ってきたオーストラリア、インドネシアに加え、EDFが欧州向けなどで扱ってきた北米、コロンビアの石炭がポートフォリオに加わった。

 米国では、天然ガスに押されて石炭の価格が下落している。欧州向けだけでなく、採算性が見込めると判断すれば日本にも運ぶ。受け入れる発電所側との連携を密にし、調達先を分散化することで安定調達につなげる狙いがある。

 第三者販売にも意欲的だ。JERAトレーディングは18年、約4500万トンの取扱量を見込む。このうち、日本向けは2千万トン強。EDF向けは減少しており500万トン弱。それ以外が第三者向けになる。

 重視する市場の一つはアジア。足元ではインド、中国に対して100万トン程度の供給実績が出てきた。

 今後、需要増加が見込まれるベトナム、バングラデシュ、フィリピンなど新興国向けの販売を狙う。地中海諸国や東欧、新規需要国である中東向けで、今後取引の機会が広がると読む。

 同社の強みは親会社の東電F&Pと中部電力、加えてEDF向けでも長年にわたって石炭を調達してきた実績だ。石炭火力のIPP事業者は、これまで燃料の調達先として上流権益を持つ生産者を頼るケースが主流だった。しかし、近年は燃料価格の低下により生産者の資金繰りが悪化し、プロジェクトの進行に影響を及ぼすケースが出てきた。

 JERAトレーディングは大規模な上流権益を持つ生産者ではないが、親会社向けだけでも年2千万トン超の現物を扱う実績は海外でも一定の評価を得ており、IPPのサプライヤーとしてじわりと存在感を高めている。

電気新聞2018年11月21日