北海道全域停電の再発防止策を提起した広域機関の検証委員会(10月9日、東京・豊洲)
北海道全域停電の再発防止策を提起した広域機関の検証委員会(10月9日、東京・豊洲)

 北海道でのエリア全域の大規模停電(ブラックアウト)に関する電力広域的運営推進機関(広域機関)の検証委員会は23日の会合で、発生原因と再発防止策の中間報告をまとめた。苫東厚真発電所3基の停止と、道東の送電線事故による水力停止が重なる「複合要因」で発生したと指摘。今冬の再発防止策として、揚水の京極発電所の稼働を前提とした苫東厚真3基の稼働や、35万キロワット程度の負荷遮断量の拡大を盛り込んだ。また、北本連系設備を来年3月に90万キロワットまで増強した後のさらなる増強要否を、国や広域機関で早期に検討する必要性を提起した。

 中間報告は、9月6日午前3時7分の地震発生から3時25分のブラックアウトに至る主要事象はほぼ解明したとした上で、北海道電力の設備形成や地震後の設備運用は「必ずしも不適切だったとは言えない」と指摘した。

 一方で、ブラックアウトが再発すれば、道民の生命にも関わる今冬を念頭に取り組む早期の設備運用対策と、中長期の設備運用・形成面の対策に分けて防止策を盛り込んだ。

 早期対策の有効性はシミュレーションで検証した。地震発生時と同量の209万キロワットの供給力が脱落しても京極1、2号機が稼働すればブラックアウトにならなかったと確認したため、京極2基が稼働できる状態を前提に苫東厚真3基の運転を容認する。

 京極1基が停止した場合は、周波数調整機能を持たない苫東厚真1号機を20万キロワット分(京極1基分)抑制する。ただ、高需要期は安定供給を保つため、抑制ではなく火力の出力増加で対応する。

 さらに、地震発生時より多い233万キロワットの脱落も想定し、最大限の負荷遮断と北本連系設備の活用でも需給一致に足りない約35万キロワット分を、既に10月10日から負荷遮断量に追加した。遮断量の最大値は181万キロワットに増えた。また、需要が400万キロワットを下回る時には周波数が46~47ヘルツまで低下しても運転可能な電源を稼働させておく。

 北本連系設備は、既存設備を外部電源が不要な自励式装置に変えるか、90万キロワットからさらに増強することの要否を検討の選択肢に挙げた。同時に、政府は増強が必要になった場合の費用負担の在り方を早期に検討する必要があるとした。一方で中長期の設備運用対策として、再生可能エネルギーを含む電源の一斉解列を防ぐため、周波数低下防止装置(UFR)の整定値を抜本的に見直すとした。

 中間報告は25日に経済産業省が開く電力レジリエンスワーキンググループ(WG)に報告し、年内にも最終報告をまとめる。

◆当面の主な再発防止策
・負荷遮断量を35万キロワット程度追加
・京極1、2号機が運転可能な状態であることを前提に苫東厚真3基を運転
・京極1基の停止時は、苫東厚真1号機の出力を京極1基分(20万キロワット程度)抑制。高需要期は安定供給の点から抑制ではなく火力の出力を増加
・周波数が46~47ヘルツに低下しても運転できる電源を需要の30~35%程度稼働させておく
・京極1基停止時の対策が適切か、広域機関が監視

電気新聞2018年10月24日