北海道の全域停電を検証する電力広域的運営推進機関(広域機関)の検証委員会は9月21日、初会合を都内で開き、事故時の停電防止基準では想定していない6つの重要設備が地震から短時間で脱落したことなどを明らかにした。苫東厚真1、2、4号機のほか、地震直後に道央と道東を結ぶ3つの基幹送電線の停止も判明。委員長の横山明彦・東京大学大学院教授は会合後の会見で、全域停電までの北海道電力の対応は「適切だった」と述べた。
国際的には1カ所の発電所・送電線が故障しても停電しないよう電力系統を構築する「N―1」と呼ぶ基準がある。Nが電力系統で、1つの設備が失われたという意味だ。北海道電力は過去最大実績に当たる129万キロワットの計画外停止が起きても安定供給に必要な予備率を確保する考えを示しており、複数の専門家は国際基準より厳しい想定(N―2基準相当)とみていた。
初会合では地震直後の6日午前3時8分に狩勝、新得追分、日高の3送電線が停止したことが明らかにされ、横山委員長は従来基準を大幅に超える「N―6に近いN―4以上の事象」と会見で表現。委員の辻隆男・横浜国立大学大学院准教授は、会合の中で「こういった『超稀頻度リスク』をどこまで想定してどう対応するのか、簡単ではないが検討頂きたい」と求めた。
会合では、基幹送電線の故障で道東・北見エリアの43万キロワットの水力発電所が停止したこと、北海道電力が需要(負荷)の遮断量を最大146万キロワットに設定していたこと、地震後約18分稼働した苫東厚真発電所1号機も、地震直後から出力を徐々に下げていったことなどが明らかにされた。
水力の脱落量が比較的多いことから、委員の井上俊雄・電力中央研究所システム技術研究所長は全域停電の原因を把握する上で「重要なポイント」と指摘。委員の岩船由美子・東京大学特任教授は「負荷遮断量は適切だったのか」と広域機関事務局に質問した。事務局は水力脱落の有無と全域停電との関連や、負荷遮断量の適正性を検証する考えを示した。
横山委員長は会合後の会見で、需要に対する急激な供給力減少が全域停電の要因との認識を示した。事務局も要因分析は一定の検証を終えたとし、第2回会合で全域停電からの復旧手順、第3回会合で再発防止策を検証し10月中に中間報告を示す。事務局は再発防止策検討の論点として、超稀頻度事故に備えた設備形成の考え方や、周波数低下防止装置の整定値見直し要否など3項目を示している。
電気新聞2018年9月25日
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