メタバースを活用したO&Mのデモが行われた(10日、千葉県市原市)

 JERAは火力発電所の運営業務をデジタル技術で変革させる「デジタル発電所(DPP)」の一環として、メタバースを活用した発電設備の運用・保守(O&M)業務を進めている。各発電所の設備状態をデータ分析によって遠隔監視する専門組織「G―DAC」と現場を連携。メタバース上で設備の状態を共有しながら相互連携を図ることで、設備故障の予兆検知や現場業務の効率化につなげる。10日、先行導入する姉崎火力発電所(千葉県市原市)の現場を公開。G―DACとの連携方法を紹介した。

 G―DACは発電設備のデータ分析に特化した組織で、東日本支社内に拠点を構える。分析したデータに基づき各発電所の遠隔監視を行い、現場の業務を24時間体制でサポート。姉崎火力は新1~3号機(LNG、各65万キロワット)でDPPを導入しており、G―DACと連携して設備のO&M業務を進めている。

 同日は、メタバース空間でG―DACの要員と発電所員が連携を図りながら、設備トラブルに対応するデモ操作を公開した。メタバース上では、JERAの発電所運営ノウハウを学習させた生成AI(人工知能)技術によるシステム「EKA」も活用することで、最適な対応方法を瞬時に判断。熟練技術者と同等の知見や経験値に基づく現場対応が可能となり、トラブル対応の迅速化や業務効率化につなげられる。

 現地でDPPの取り組み状況を説明した渡部哲也副社長は、「ボラティリティー(変動性)が大きく将来の予測が困難なエネルギー業界で、デジタル技術の活用は必要不可欠だ」と強調。生成AIの活用などで連携を図る日本マイクロソフトの津坂美樹社長は、「当社のデジタル技術とJERAのエネルギーに関する豊富な知見や経験を活用し、より多くの課題を解決していく」と意気込みを語った。

 JERAは姉崎火力など一部の国内火力発電所でDPPの導入を進めている。今年7月には、マイクロソフトと戦略的パートナーシップ協定を締結。JERAの現場力とマイクロソフトの最先端技術を掛け合わせ、エネルギー業界の変革に取り組む方向性を打ち出している。

電気新聞2023年10月11日