未明に発生した地震で停電した札幌市内。信号やビルの灯りは消え、自動車のヘッドライトだけが光っている(6日朝)
未明に発生した地震で停電した札幌市内。信号やビルの灯りは消え、自動車のヘッドライトだけが光っている(6日朝)

※北海道地震関連の最新情報はニュースページをご覧ください。(記事中の停電戸数・供給力見込みなどは9月7日掲載当時のものです)

 6日午前3時8分頃に発生した北海道胆振地方東部地震の影響で、北海道電力エリアでは全域(約295万戸)が停電する事態となった。エリア全域の停電が発生するのは、国内で初めて。地震時に稼働中だった主力電源の苫東厚真発電所(石炭火力、計165万キロワット)は設備損傷があり、復帰には1週間以上かかる見込み。北海道電力の真弓明彦社長は同日昼頃に会見を開き、「(北海道民に)この先多大なご負担、ご迷惑を掛けることについてトップとしておわび申し上げる」と陳謝した上で、早期の電力復旧に全力を挙げる方針を示した。

 今回の地震では、全3基が稼働していた主力の苫東厚真発電所が緊急停止。電力の需給バランスを保てず、水力を含む全ての電源が停止して全域停電に至った。苫東厚真は1号機(35万キロワット)、2号機(60万キロワット)でボイラー配管の蒸気漏れが見つかった。4号機(70万キロワット)ではタービン付近で出火が確認された。復旧には「3台とも1週間以上かかる見通し」(真弓社長)という。今後も需要に見合った供給力を確保できる見通しが立たないため、計画停電も含め検討する。

 道内の水力発電所は、既に計30万キロワット程度が立ち上がっている。火力では砂川発電所3号機(12万5千キロワット)が6日午後に復帰し、札幌市中央区の一部や旭川市の一部で停電が解消された。奈井江発電所(2基計35万キロワット)、伊達発電所(2基計70万キロワット)、知内発電所(2基計70万キロワット)を7日中にも再起動したい考えだ。60万キロワットの電力融通を本州から受けられる北本連系設備も早期の活用開始を目指す。単純計算では、これらの対策で約290万キロワットの供給力を確保できる。

 ただ、5日の北海道電力エリアのピーク需要は約380万キロワットだった。苫東厚真発電所の戦力復帰までは、需要に見合う供給力を確保できないと判断。一部地域では停電が長引く可能性もあるため、電源車の配備や他の電力会社からの応援確保を進めながら「早期の電力復旧に全勢力を挙げて対応していく」(真弓社長)方針だ。計画停電などの対応に踏み切るかは「検討を進めている。関係機関や国、自治体と相談する」(同)とした。

 地震直前の6日午前2時~3時、北海道電力エリアの供給力は約396万キロワット、需要は283万キロワットだった。予備力は113万キロワットで、予備率が39.8%だった。

 北海道電力エリアでは、新規制基準適合性審査が長引き、原子力の泊発電所の再稼働が遅れている。一方、来年2月の営業運転開始を目指し、同社初のLNG(液化天然ガス)火力である石狩湾新港発電所1号機(56万9400キロワット)を建設中。来月、総合試運転を始める予定だ。北本連系設備の容量を計90万キロワットに増強する工事も来年3月の運用開始を目指している。

電気新聞2018年9月7日