今秋に実証を開始する浮体式洋上風力発電システム
今秋に実証を開始する浮体式洋上風力発電システム

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と丸紅などは、今秋開始する浮体式洋上風力発電システムの実証を前に、洞海湾(北九州市)内に係留している風力発電システムを公開した。水深50メートル程度の浅い海域へ設置することを想定したシステムで、バージ型と呼ばれるドーナツ状の小型浮体構造物に風車を設置したものだ。8月末に設置海域となる北九州市沖約15キロメートル地点に船で引きながら運搬。電力ケーブルの接続を行った後、2021年度まで実証を行う。

 世界で主流のスパー型は風車タワーをそのまま海底まで延伸した形状。安定的に設置するには100メートル程度の水深が必要だった。日本の海域に適用しにくいものの、バージ型なら50メートル程度の水深でも建てられるので日本の近海に最適だ。

 NEDOなどが公開した浮体式構造物は日立造船が製造した。長さと幅がそれぞれ51メートルで高さが10メートル。この一辺に出力3千キロワットの風車を立てる台があり、構造物全体で安定性を保つ。設計上は50年に一度の頻度で襲来するレベルの波高8.99メートル、風速毎秒51メートルの台風に耐えられるという。

 風車はグローカルが設計。ドイツのメーカーが製作した。施工性を考慮して2枚羽根を採用しており3枚羽根タイプより軽い。

 陸上設置型風力で3枚羽根を採用する出力3千キロワット機の重量は約200トン。公開した浮体式風力は発電機などを格納する「ナセル」とセットで約133トンに抑えた。2枚羽根のため強風にあおられにくく、台風などにも強いという。

 公開日に会見したNEDO新エネルギー部統括調査員・プロジェクトマネージャーの伊藤正治氏は、発電コストについて「2023年には1キロワット時当たり23円を目指す」と強調。23円がFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)を活用して「利益を出せる水準となる」ためだ。

 出力5千キロワット機を設置できるとの見解も示し、「1キロワット時当たり20円以下も視野に入る」と指摘。キロワット時当たりの建設単価はさらに引き下げられる見込みだ。

 完成した発電システムは設置海域まで船で引っ張りながら運搬した後、海底のいかりとチェーンにつなぐ。送電ケーブルも接続する。実証開始後は浮体式構造物に設置している風況計や発電実績といった各種データを解析。実用化に向けた検証を進める。

電気新聞2018年8月14日