前回述べたAI駆動型データインテグレーションで多くの活用可能なデータを準備できても、実際に活用できなければ、ビッグデータが宝の山に変わることはない。GEの産業向けIoTプラットフォームPredixではマイクロサービス・アーキテクチャをはじめとした各種取り組みにより企業による柔軟なアプリケーション開発とデータ活用を支援している。今回はマイクロサービス・アーキテクチャとインタラクティブ開発環境について取り上げる。
図_T&T_GE4_PREDIX_4c
 

サービスとしてプラットフォームを提供するPredixクラウド

 
 Predixクラウドは産業向けIoTアプリケーションに最適化されたクラウドサービス基盤である。ハードウエア、ミドルウエア、ランタイム、各種ライブラリなど、IoTアプリケーションの開発および実行に必要となる環境をPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)形式で提供している。電力業界を含む各産業ではIoTの取り組みが盛んだが、プラットフォームを活用することで企業は環境準備に煩わされることなくアプリケーション開発に取り組むことができる。

 Predixクラウドではアプリケーション開発を促進する仕組みとしてマイクロサービス・アーキテクチャを採用している。マイクロサービス・アーキテクチャではアプリケーションは複数の小さなサービスの集合体として構成され、各サービスの連携によって目的(=アプリケーション)が実現される。

 この仕組みはGEが提供する産業用アプリケーションでも活用されている。例えばアセット最適化ソリューションの場合、アプリケーションはデータの収集、蓄積、分析、結果表示など細かな単位で分割されたマイクロサービスから構成される。細かな単位で機能を分割することにより開発者の独自性と利便性が向上、機能追加や保守メンテナンスが容易となり、結果、開発スピードを向上させることができる。短い期間で開発、テストを繰り返すアジャイルソフトウエア開発との相性も良い。

 またこのソリューションではセンサーデータだけでなくアセット情報やメンテナンス履歴など様々なデータを組み合わせて分析が行われるが、センサーデータには時系列DB、アセット情報にはグラフDB、メンテナンス履歴にはリレーショナルDBというようにデータタイプに合わせて最適な格納方法を使い分けることができる。このような適材適所の使い分けもマイクロサービス・アーキテクチャにより可能となる。
 

直感的にアプリを開発

 
 GEではアプリケーション開発を促進する仕組みをさらに進化させるべく、一部のユーザーに対してインタラクティブ開発環境を提供する取り組みを始めた。

図_T&T_GE4_目的_4c
 インタラクティブ開発環境を使うと開発経験が浅いユーザーでもドラッグ・アンド・ドロップのような直感的な動作もしくは人間にも読みやすい抽象化されたプログラミング言語で簡単にアプリケーションを開発することができる。様々なデータを取り込んでAIで関連付けて利用可能なデータとして準備、その後、インタラクティブ開発環境にある様々な部品を使ってチャート表示やレポート作成、アラート生成や地図表示など自身の目的に合った分析や表現を実施する。インタラクティブ開発環境が産業用アプリケーションの新たな可能性を引き出す。

 企業は他社に先駆けてデータを活用し、データに基づくビジネス判断を俊敏に行うことを目標としている。そこに横たわる2つの課題がデータインテグレーションの時間・コストとデータを実際に活用する為のアプリケーション開発のスピードだ。GEはAI駆動型データインテグレーションやインタラクティブ開発環境など産業向けIoTプラットフォームを進化させる取り組みにより企業のさらなるデジタル化に貢献していく。

【用語解説】
◆アジャイルソフトウエア開発
顧客に素早く頻繁に価値を提供することを可能にする反復型ソフトウエア開発手法。プランニング、デザイン、コーディング、テストのサイクルを継続的に実施する過程で1つずつ機能を追加的に開発していく。対語として従来型ソフトウエア開発手法のウォータフォール型開発が存在する。

◆グラフDB
ノード(=アセット)とノードのプロパティおよびノード間の関係性で表現されるデータモデルを格納するデータストア。SNSのつながりやリコメンデーションに用いられる。産業用機器などの複雑なアセット情報の格納にも適している。

電気新聞2018年4月9日