再生可能エネルギーや蓄電池の台頭、今後の電気自動車(EV)の急激な増加、消費者そのものが発電者となるプロシューマの増加に代表される通り、電力事業者を取り巻く事業環境は急激に変化している。そんな中、世界の電力市場では、今までになくデジタルの活用が大きなトレンドとなっている。電力業界に導入が急速に進むGEの産業向けIoTプラットフォームとその最新テクノロジー、そしてなぜ利用者が急増しているのか考察する。

 2016年2月にGEが一般公開した産業向けIoTプラットフォームのPredixには、この2年で電力事業者の利用企業数だけで100社まで迫る勢いをみせている。この間、様々なテクノロジーが実装され、今もなお、最新テクノロジーを追加し、進化するプラットフォームとなっている。今年中に2つの最新テクノロジーを正式リリースする予定だが、ここではそのうち、AI駆動型データインテグレーションを紹介する。
 

AIによるデータ関連付けでインテグレーション作業を効率化


 
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 企業は、自社のデータや公開されているオープンデータを利用し、様々な分析手法により日々価値を生み出すことを行っている。もし、今の手法で予測などの精度を上げる、または、データから新しい知見を見つけるためにより多くの仮説を立てようとするとき、今まで以上にデータが必要となる。つまりそれは、データの量を増やす(期間を延ばす)、データの粒度を上げる、データの種類を増やす事で成し遂げられる。

 そこで問題になるのが、データを分析の対象として利用可能な状態にするというインテグレーション作業だ。分析プロジェクトにおいて、80%の時間とコストがこのインテグレーション作業に費やされていると言われている。ここにAIを活用するのが「AI駆動型データインテグレーション」だ。AIは、リレーショナルデータベースのようなテーブル構造ではなく、セマンティック技術を用いたセマンティック・データ・モデリングを利用する。

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 まず最初のAI処理により、データそのものの種類や特性を多面的かつ数値的に判断する。例えば、この一連のデータは、ある期間に時系列で記録され、整数のみ、正の数のみ、全体として最小nと最大mの幅で変動し、毎回の最大変動値の幅、全体傾向としてある特性になるなどといった具合だ。つまり、人がデータを見た瞬間に判断している内容を、数値的にAIが判断する。判断と同時にこれらデータの特徴や目次となるインデックスなどメタデータを付与し、メタデータ保存領域に整備する。

 次に、そのメタデータを利用し、別のAI処理により既存のデータを含む全てのデータ間の関係性を判断させる。簡単に言うと、このデータは、今まで学習したデータの中でガスタービン機器のあるデータに近いデータ特性を持っており、ある定量化された確率で同一機器または、関連するセンサーのデータであるといった具合だ。高い精度を実現するため、GEによって過去OT/ITのデータより事前に機械学習させた教師有り学習済みAIを利用する。

 

学習済みAIに企業特化のデータ学習で、より高い精度に


 
 その後は、各企業に特化したデータを利用することにより、継続的に学習し、さらに精度を上げることが可能である。これにより、今までインテグレーション処理したことのあるデータはもちろん、今まで扱ったことがないデータに対しても予測と学習により、高い精度で自動的に活用できるデータになる。

 AIによるデータのインテグレーションは、今後IoTの発展に伴い今まで扱いきれなかったデータをよりリアルタイムに活用していくため、必須の機能となる。

【用語解説】
◆セマンティック・データ・モデリング
データの構成を論理的に管理/表現する手法の1つで、概念データモデルに分類される。データやデータ間の関係性について、現実世界における意味を付与するデータ構成を取り、データの意味が理解しやすく、スケーラブルなモデル。

電気新聞2018年4月2日