量子科学技術研究開発機構(量研機構)の那珂研究所(茨城県那珂市)で、今年中頃にも核融合研究装置「JT―60SA」の運転が始まる。国際熱核融合実験炉「ITER」では難しい高圧でプラズマを維持する実験を行い、核融合原型炉に必要な運転技術の確立を目指す。現在は絶縁部改修作業後の超電導コイル全体を最終確認する「パッシェン試験」を実施中。コイルの冷却に必要な真空排気運転(統合試験運転)、通電試験を経てファーストプラズマ(運転開始)が実現する。
JT―60SAはITERによる研究の補完を目的とし、日欧が共同で建設してきた。ITERと同様、強力な磁場でドーナツ形状のプラズマを閉じ込める「トカマク方式」を採用している。
2025年を予定するITERのファーストプラズマに先駆けて、JT―60SAの実験に着手。実験で得られた課題や成果をITER計画に反映させる。
JT―60SAは13年1月に着工。機器の組み立て作業は20年3月に完了し当初は同年9月のファーストプラズマを予定していた。ところが新型コロナウイルス感染拡大で欧州の関係者が来日できず準備作業に遅れが生じた。
同年11月から試験運転を順次行い、超電導コイルの冷却や真空容器の温度を加熱・維持する「ベーキング」を実施。21年3月には超電導コイルに対し定格電流となる25.7kAの通電に成功した。
だが、同年4月に試験運転が中断。超電導コイル接続部の損傷を確認したためだ。昨年末まで改修作業が続き、今年に入ってパッシェン試験に移った。
量研機構は21日、報道向けにJT―60SAの撮影会を開いた。JT―60SAの機器設計や組み立て作業に携わってきた那珂研究所トカマクシステム技術開発部の松永剛・上席研究員は、「ここまで苦労もあったが、ようやくスタートラインに立てる」と感慨深げに語った。
電気新聞2023年4月24日
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