広がるか「C2N」

 
 米国で、石炭火力発電所を原子力発電所にリプレース(C2N)する検討が進んでいる。運転中の石炭火力を、小型モジュール型原子炉(SMR)など先進型原子炉(AR)にリプレースする方式が有力で、ARの開発動向に合わせて2030~40年代に実現する可能性が高まっている。海外電力調査会の田中晃主任研究員は、C2Nの実現性について「ARの開発工程やコストに左右されるが、技術的には問題はない」と指摘する。

 C2Nは、開閉所や送電設備など石炭火力の資産を活用し、発電事業者や地域社会に大きな経済効果を与える。米国エネルギー省(DOE)は22年9月、C2Nに関する調査報告書を公表。閉鎖済みと運転中の石炭火力のうち、C2Nで2億6330万キロワットのARが設置可能と分析した。

 閉鎖済みサイトは、将来の原子力利用の観点から見ると、解体や土地売却などで閉鎖後には急速に劣化する。このため、報告書では運転中のサイトの優位性を指摘した。

 一方、更地に原子力を新設するケースとC2Nを比較すると、C2Nの方が低コストで、工程も短縮されることを解説。ケーススタディーでは、120万キロワットの石炭火力を原子力にリプレースした場合、建設コストは新設と比べて15~35%削減できる結果となった。

 雇用を含む地域経済への影響では、石炭火力の勤務者が持つ熟練の技術を活用できる。60万キロワットの運転中石炭火力1基と、60万キロワットの廃止済み石炭火力1基で構成するサイトをC2Nすると、650人以上の雇用増と、年間約2億7500万ドルの追加経済効果があると算定した。

 政府は財政面で、インフレ抑制法(IRA)の中で技術中立的なカーボンフリー電源を補助する方針を示しており、C2Nを支援する。

 米国社会でのC2Nの受容性について、田中氏は「石炭火力がコミュニティーの形成に大きな役割を果たしている地域は、石炭火力廃止によるコミュニティーの喪失を懸念している。C2Nで地域を存続させる観点で、前向きに受け止められるのでは」と説明する。

電気新聞2023年4月7日