送配電事業者のニーズ応え


デジタル技術を駆使、最適化実現


 

青柳 亮子氏(フィールドサービス事業バイスプレジデント パワー&グリッドセグメントリーダー)

 シュナイダーは、送配電事業者のあらゆるニーズにデジタルソリューションで応えている。計画、設計から建設や構築、その後の運用、保守までライフサイクルで業務を最適化する。同社はIoTソリューション「エコストラクチャー」をオープンプラットフォームで構築しており、「どの会社の機器やソフトウエアともつながれる」とフィールドサービス事業バイスプレジデントでパワー&グリッドセグメントリーダーも務める青柳亮子氏は強みを解説する。
 デジタルグリッドのアプリケーションの一つである「アークFM」は、ドラッグ&ドロップといった直感的な操作で配電設備を設計できる。建物の新設時に引き込み線や変圧器などの設備を設置する際の、シミュレーション業務を効率化する。経験が少ない技術者も容易に設計できるようになる。
 高度配電管理システム(ADMS)は世界で80以上の電力会社に採用され、トップシェアを誇る。190以上の中央監視室に納めた。既存システムに統合可能で、配電と送電の部門が別々のシステムを使用している状況でもデータを共有できる。停電情報を共有し、早期復旧に対応できるようにするシステムだ。

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 再生可能エネルギーやEVの普及に伴い、DERMS(分散型エネルギーリソース管理システム)の関心が世界で高まっている。電力品質を維持しながら、再エネを系統に最大限接続できる。再エネ出力制御の回避に貢献する。
 シュナイダーが電力系統向けDERMSを提供する一方、需要家向けのDERMSを傘下の米オートグリッド社が展開する。数学者が立ち上げたベンチャーで、高精度の需要予測と、数多くのリソースを管理できるのが強みだ。
 配電設備への投資は世界で拡大する見通しだ。シュナイダーによると2020年から25年で14兆ドルが投じられ、このうち36%がデジタル分野になると予測する。青柳氏は「電力会社がよりサステナブルで柔軟な運用をするには、デジタルソリューションが不可欠」と強調する。災害対応としてのレジリエンス対策も設備投資額を底上げする見通しだ。
 カーボンニュートラルの実現に向けて社会の電化が進むほど、送配電網をデジタル技術で管理するニーズが高まっていく。シュナイダーは「グリッド・オブ・ザ・フューチャー」というコンセプトを掲げ、送配電網のスマート化を支援する。青柳氏は「デジタルと電化を掛け合わせることが、サステナビリティーを実現する一番の近道」と話す。
 

事業所「インテンシティー」


実質ゼロ、多彩な手法で


 
 2020年に完成したフランス・グルノーブル市にあるシュナイダーの事業所「インテンシティー」は、「ネットゼロ」を達成している。ビルマネジメントシステム(BMS)で照明や空調を最適に制御し、同規模の建物と比べエネルギー消費を10分の1に抑えた。マイクログリッドソリューションで太陽光発電や風力発電、蓄電池を運用し、余剰電力を系統からグルノーブル市に供給している。業員の快適性も考慮されたオフィスは、最新のデジタル技術を導入し、シュナイダーが考える「あるべき未来のビル」を体現している。

シュナイダーがフランス・グルノーブルに構えるCO2排出ネットゼロ事業所「インテンシティー」

 インテンシティーは同社のパワーシステム事業部やパワープロダクト事業部の開発拠点として5000人の従業員が働く。総敷地は2万6千平方メートルで、4つのビルが並ぶ。屋根には857キロワットの太陽光パネルと2基の風力発電を設置し、年97万キロワット時を発電する。容量300キロワット時の蓄電池と組み合わせて需要を賄う。
 プロシューマー(生産消費者)向けのクラウドソリューションで、発電や充放電を自動的に最適化する。CO2排出量を見える化する機能も搭載する。
 センサーで10分ごとにデータを取得し、オフィス内の部屋で働く人数に合わせて照明や空調を自動的に制御するほか、断熱性が高い窓を採用して空調のエネルギー消費を抑えたり、太陽の高さに合わせてブラインドを自動で調整し、日光を最適に取り込んでオフィス内を明るく保つことができる。スイッチのオンオフなどの手間を従業員にかけず、職場環境の快適性を高めながら省エネを実現する。エネルギー消費量は1平方㍍当たり37キロワット時と、同等の建物の欧州平均330キロワット時と比べて大幅にエネルギー消費量を抑えている。
 新築だけでなく、既存の建物にも積極的に最新技術を導入し、CO2排出量削減を進めている。シンガポールでは築25年の事務所でカーボンニュートラルを達成した。シュナイダーは最新のソリューションの効果を自ら導入して証明し、顧客への提案につなげていく考えだ。

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