再稼働済みの「成果」意識を

 
 日本エネルギー経済研究所は、原子力発電所の運転期間について、原子力規制委員会の審査などで停止した期間を除外し、その分を追加的に延長できる措置(カウントストップ)を導入する場合の影響をまとめた。設備利用率を70%とした場合、既設炉33基がカウントストップ期間で失った発電量は約2兆2千億キロワット時で、発電量の価値は約30兆円に上ると試算。この発電量を全てLNG火力で代替した場合と比べると、二酸化炭素(CO2)排出量は9億9700万トン削減されたことになる。

※クリックで拡大

 一定の条件を置いて試算した。東京電力福島第一原子力発電所事故後の停止から再稼働までの期間に加え、特定重大事故等対処施設(特重施設)の完成期限を含む停止期間や、運転差し止め仮処分による停止期間を算定対象とした。

 福島第一事故以前から停止していたプラントについては、2011年3月11日を停止日と設定。22年12月時点で再稼働していないプラントは、一部を除いて23年末を再稼働日とした。

 試算の結果、33基のカウントストップ期間は計357.3年で、1基平均で10.8年だった。発電量の約2兆2千億キロワット時は、21年の国内総発電量の約2.2倍となる。発電量価値の約30兆円は、21年の平均卸電力価格だった1キロワット時当たり13.5円を基に算出した。

 LNG火力と比較したCO2排出量の差となる9億9700万トンは、20年度の日本のエネルギー起源CO2排出量を3千万トン上回る。

 一方で、プラントを再稼働済み、再稼働見込み、未再稼働と分類すると、未再稼働プラントの残存運転期間が長くなる。試算したエネ研の木村謙仁主任研究員は、「再稼働への道筋を刻んできた先行プラントが成し遂げてきた成果と、その背景にある努力の重要性をあらためて認識する必要がある」と指摘する。

 また、規制委の審査に合格しなければ、カウントストップで延長された運転期間とは関係なく、運転継続が不可能になる。木村氏は「このようなチェックの仕組みを通じ、経年化の影響を把握しつつ、既設炉を長期的に有効活用していくことが重要だ」と強調した。

 原子力発電所の運転期間は原子炉等規制法(炉規法)で、営業運転開始から40年と定められ、1回に限り20年の延長を認める規定を設けている。政府は今国会に、運転期間見直しに関する法案を提出。運転期間に関する規定を電気事業法に移管し、停止期間を差し引くことで実質的に「60年超運転」が可能となる枠組みづくりを目指している。

電気新聞2023年3月16日