対面販売を軸に電力・ガスの顧客獲得競争が繰り広げられている8写真は関電ガス受付・相談会の様子)
対面販売を軸に電力・ガスの顧客獲得競争が繰り広げられている8写真は関電ガス受付・相談会の様子)

 4月で電力小売り全面自由化が3年目、ガス小売り全面自由化が2年目に突入した。電力と比べ、ガスの新規参入者数は圧倒的に少ないが、主戦場の首都圏でもようやく参入を表明する事業者が現れ始めた。中部電力と大阪ガスによる首都圏向け小売会社も誕生。電気とガスのセット販売が自由化競争にどれだけインパクトを与えるか、2018年度は注目される年となりそうだ。
 

◆電力 電源調達力が競争左右

 
 電力小売り全面自由化が始まった16年4月以降、登録された小売電気事業者は465者を数える。都市ガスの自由化とは対照的に、新規参入が相次いでいる。地元密着の地域新電力やベンチャー系、外資系といった事業者もじわじわと増えている。

 一方、新たに市場が開放された低圧分野で、上位に名を連ねるのは大手企業だ。新電力の低圧販売量では東京ガスを筆頭にKDDI、大ガス、JXTGエネルギーと続く。ソフトバンク系のSBパワーやジュピターテレコム(JCOM)も存在感を示す。

 上位陣に共通する戦略は、強固な対面販売網だ。ガス会社やケーブルテレビ会社は家庭への訪問販売、携帯電話事業者は店頭販売で顧客を積み上げる。初めて電気の供給者を選ぶという消費者の不安を丁寧な説明で拭い去り、メリットを分かりやすく訴求できた事業者が活躍している。電力広域的運営推進機関(広域機関)によると、スイッチング(供給者変更)の申込者は2月末までに全国で10.81%まで高まった。

 だが、特別高圧や高圧まで見渡すと、大手電力会社の存在感が際立つ。新電力販売量の3位は東京電力系のテプコカスタマーサービス(TCS)で、2位のFパワーに迫る。関西電力も原子力の再稼働に合わせた値下げ攻勢で、新電力などから顧客を取り戻しており、「関西エリアは縮小せざるを得ない」と嘆く新電力も現れている。

 卸電力取引市場のスポット価格は17年度、前年度より1円以上高くなり、市場調達比率の高い新電力の体力を奪った。17年秋には新電力の低圧販売量で当時5位だった大東エナジーが撤退。業務フローの混乱など原因は多いが、安価に電力を調達できず、採算性を改善できなかったことが大きく響いた。大手新電力も予断を許さない状況になっている。

 電力小売事業を安定させるため、電源調達体制を整備する新電力が相次ぐ。東邦ガスは関電や中部電力と相対電源の調達で協議を進める。Looopは関西エリアの高圧分野で関電の取次となった。東急パワーサプライは卸供給を受けていた東北電力から出資を受け、関係性を強化した。販売量の減少を食い止めたい大手電力と、安定電源を確保したい新電力の思惑が一致する形での提携は今後も増えていきそうだ。

 言い換えれば、安価な安定電源を調達できない新電力は、撤退を余儀なくされる可能性が高まる。今後、増え続ける小売電気事業者の再編が起こるか注目が集まる。

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